『水星の魔女』は“意志”の所在を徹底して描く 決闘シーンは初代ガンダムのオマージュも

『水星の魔女』は意志の所在を徹底して描く

 “逃げたら一つ、進めば二つ”。作中ではスレッタが自分を奮起させるために何度も登場してきた言葉だが、改めてこの言葉の意味を深く感じることになった。『機動戦士ガンダム 水星の魔女』第22話「紡がれる道」は、同じ境遇に立たされたスレッタとミオリネの美しい会話が印象的だった。

※本稿には『機動戦士ガンダム 水星の魔女』第22話のネタバレを含みます。

 自らの過ちによって多くの犠牲を生んだことへの罪悪感に苛まれていたミオリネ。地球へ降り立ち、アーシアンとの交渉を進めていた最中に起きてしまったプロスペラの暴走は予想外だった。このことからわかるのはミオリネが正義感と責任感の強い人物であるということだ。気高いグエルに対しても食ってかかったり、落ち込んでいるスレッタを励ましたり。これまでのミオリネの表情を思い返しても、常に自信に溢れていた。そんなミオリネが自分の部屋に閉じこもり、グエルの呼びかけにも答えようとしない。目の下にはクマもできている。花婿の立場であるグエルでさえも、遠慮してこれ以上踏み込もうとはしない。

 しかし、スレッタは進み続けた。これまで母親とエアリアルに支えられるばかりで、一人で進むことをしてこなかったスレッタ。そんな彼女が自らの選択でクワイエット・ゼロへと向かうことを決めた。だが、スレッタの選択は孤独だ。ミオリネには自分の選択を肯定してほしいという秘めた思いがあったのかもしれないが、ミオリネが弱音を吐くとスレッタは「これは間違いなんかじゃありません」と肯定の言葉を投げかける。

『水星の魔女』スレッタがついに“主人公”化 クワイエット・ゼロの禍々しさも明らかに

これまでクワイエット・ゼロという言葉は何度も登場してきたが、それが実体を持つのか持たないのか、その詳細は一切不明だった。しかし、…

 自分の犯した過ちに一人では向き合えない。ただそれを見て見ぬ振りをすることもできない。ミオリネはスレッタに一緒に地球へ行ってほしいと伝える。扉を開けていいかと問いかけるスレッタに、ミオリネは自分で行くと言う。ずっと誰かに支えられてきたスレッタがミオリネを支える立場になり、他人を信じられなかったミオリネがスレッタを信じ、支えられている。2人は晴れて花嫁と花婿の関係になることができた。ひたすらに扉へ向かうミオリネの足元だけが映し出されるカットは、ミオリネが前へと進んでいく意志の強さが感じられるシーンだった。この象徴的なカットが意味しているのは『機動戦士ガンダム 水星の魔女』という作品は自らの意志で進むことの大切さをことさらに描いているということだ。

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