宇野維正の興行ランキング一刀両断!
洋画トップ4独占は8年ぶり! それでも「ハリウッド映画の復権」は遠い理由
先週末の動員ランキングは、2週連続でディズニーの『リトル・マーメイド』がトップに。週末3日間の動員は26万7000人、興収は4億500万円。累計では動員が96万9000人、興収は14億6700万円。公開初週との興収比は57%。先週の本コラム(『リトル・マーメイド』貫禄の1位も勢いはなし 今週末のスクリーンの奪い合いはどうなる?)でも触れたように、やはり過去のディズニー・クラシックの実写化作品としては勢いがない成績だが、先週末公開されたスーパーヒーロー映画の有力作2本、ソニー&マーベルのアニメーション作品『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース』とワーナー&DCの『ザ・フラッシュ』はその壁を超えられなかったことになる。
もっとも、初登場2位となった『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース』のオープニング3日間の動員24万9000人、興収3億9600万円という数字は、2019年3月に日本公開された1作目『スパイダーマン:スパイダーバース』との初日比で217%、オープニング3日間比で182%と、大健闘と言える成績。『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』を超えて、2023年の初日最高記録を更新した北米の状況とは比べるべくもないが、現在の日本の外国映画を取り巻く状況では最良の結果だろう。
『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース』の日本でのヒットは、まず何よりも前作『スパイダーマン:スパイダーバース』への支持や作品の認知度がこの3年間で広がっていたこと、そして今作も前評判が非常に高かったことが要因だろう。一方で、同様に前評判が高かった同日公開の『ザ・フラッシュ』が初登場4位、オープニング3日間の動員が13万8000人、興収が2億1500万円と、『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース』の54%という数字にとどまっている。
DC作品として前作となる今年3月公開の『シャザム!〜神々の怒り〜』のオープニング3日間の興収は8500万、前々作となる2022年12月公開の『ブラックアダム』のオープニング3日間の成績は1億6500万円。つまり、これでも『ザ・フラッシュ』は『シャザム!〜神々の怒り〜』比で252%、『ブラックアダム』比でも130%のオープニング成績をあげていることになる。DC作品は年内に『Blue Beetle(原題)』と『Aquaman and the Lost Kingdom(原題)』の2作品を公開した後、2024年には劇場公開作が一つもなく、ジェームズ・ガン監督・脚本による2025年7月公開の『Superman: Legacy』によってユニバース作品として新たなスタートを切るわけだが(いずれも公開スケジュールは北米のもの)、そうした過渡期にあっても数字に上昇傾向が見られただけでもよしとすべきなのかもしれない。