『らんまん』志尊淳の思いがあふれた満月の夜 百人一首に託されたタキと寿恵子の心情
「わしは子どもの頃からずっと一緒に育った槙野の姉弟が好きながじゃ。わしはただの槙野姉弟が好きすぎる井上竹雄じゃ。あなたのことが好きなただの男じゃ! ほんじゃきあなたを一人っきりにはせん」
手順を踏まないと話せない竹雄の律義さが、恋愛面で誠実さと受け取られるかはひとえに相手による。綾は否定しなかった。「バカじゃのう」と言いながら、目を逸らさずにいられないのは、竹雄の思いが届いた証拠である。竹雄は綾がただ好きなのではなく、綾という人間が好きで、それは万太郎に対しても同じである。「あなたはそんじょそこらの女子じゃない」「泣いても悔やんでも、空が晴れたら立ち上がる」は相手を全肯定しなければ出てこない言葉で、それらを絞り出すため全身全霊で悩む姿は尊みの極致だった。
竹雄の2度目の告白は空振りに終わったが、綾の中で竹雄は夜空の月のように孤独を照らす存在になったはずだ。時間は刻一刻と過ぎていく。何かを覚ったタキは医者を呼ぶように言いつけた。別れの時が近づいている。
■放送情報
NHK連続テレビ小説『らんまん』【全130回(全26週)】
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00 〜11:15
出演:神木隆之介、浜辺美波、志尊淳、佐久間由衣、広末涼子、松坂慶子ほか
作:長田育恵
語り:宮﨑あおい
音楽:阿部海太郎
主題歌:あいみょん
制作統括:松川博敬
プロデューサー:板垣麻衣子、浅沼利信、藤原敬久
演出:渡邊良雄、津田温子、深川貴志ほか
写真提供=NHK