『セーラームーン』『東リベ』2部作の劇場版相次ぐ サブスク時代の戦略は“推し”にあり?
『劇場版 Collar×Malice -deep cover-』『美少女戦士セーラームーンCosmos』『劇場版アイドリッシュセブン LIVE 4bit BEYOND THE PERiOD』など、初夏公開のアニメ系の劇場版が軒並み2部作で公開されている。日本映画のこうした2部作の劇場公開作品は以前から存在したが、アニメ作品を軸に2部作での劇場公開は、より一般的なものとして普及し始めている。
そもそもこのような劇場公開作品における「前後編2部作」のスタイルを日本に定着させたのは、2006年公開の『デスノート』である。後編公開の1週間前に『金曜ロードショー』(日本テレビ系)枠で前編を放送したことが成功の鍵となり、後編は興行収入52億円の大ヒットとなった名作だ。当初は連続ドラマ化が検討されていた本作だが、作品内容に対する倫理的な観点から劇場版へと形を変えることになった。しかし原作の最大の魅力である緻密な頭脳戦を1本の映画の枠に納めるのは難しいということで、前後編2部作のフォーマットが生まれたわけだ。
このように原作のボリュームを損なうことなく、物語の展開を丁寧に描くことができるのは、前後編2部作の強みでもある。実際に、映画『東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編 -運命-/-決戦-』の岡田翔太プロデューサーは、本作を2部作にした理由を「1本にするとどうしても落とさないといけない部分があるし、描き切れない部分があるとなったときに、前編後編に分けてフルで観てほしいなと」と語っている。(※)また2作品を連続して製作することで、「続編」として再度キャストとスタッフを結集させるよりもコストを押さえることができる点も、製作側の大きなメリットだろう。
一方で、通常であれば前編の盛り上がりによって後編にも影響が出てしまうリスクが高い。しかし近年アニメ作品を中心に目立っている“推し”の要素が強いコンテンツの場合はそのリスクが低いため、展開しやすいという点が挙げられる。冒頭に挙げた『劇場版 Collar×Malice -deep cover-』『美少女戦士セーラームーンCosmos』などは、まさにその一例である。既にアニメやゲームなどの別のコンテンツによって、観客の“推し”の所在がはっきりしているからこそ、ある程度の集客を見込んだ状態で劇場版2部作に踏み切ることができる。