福山雅治×大泉洋『ラストマン』高視聴率の理由は? “日曜劇場”だからこそのポイント

『ラストマン』高視聴率の理由は?

 日曜劇場『ラストマンー全盲の捜査官ー』(TBS系)が好調だ。他の夏ドラマが視聴率で苦戦する中、本作は安定的に2桁の数字をキープしている。その理由はどこにあるのだろう。

 まず豪華キャスト陣が競演の手堅さ。ダブル主演の福山雅治と大泉洋をはじめ、永瀬廉、今田美桜、吉田羊、上川隆也と他作品では主役やヒロインの位置にいる俳優陣が助演に回り、第5話では福山演じる皆実広見の死亡した両親が要潤と相武紗季、上川演じる護道京吾の妻が森口瑤子であることが明らかになり、大泉演じる護道心太朗の実父も津田健次郎が演じている。

 福山雅治といえば言わずと知れた国民的スターの一人だが、本作で彼が演じるのは副題にもある通り“全盲の捜査官”だ。それもFBIから特別待遇で迎えられ、日本の警察ではアンタッチャブルとされる捜査も平気でやってのけ犯人をあぶりだす一筋縄ではいかないキャラクターである。

 『ラストマン』のひとつの肝が、犯罪捜査においてはハンデとされる全盲を個性、もしくは武器としてとらえ、ストーリーを展開させる“逆転の発想”だろう。皆実の目が見えないことで犯人や容疑者が隙を見せた瞬間を彼は漏れなく察知し容赦なく矛盾点を突く。過去にも目が不自由な人物が謎を解く作品は存在したが、その多くはいわゆる安楽椅子探偵=自宅から出ず、他者の話から犯人を推理してみせるパターン。が、皆実は夜間の倉庫や爆弾犯のもとにも単独で赴き、時にはアクションすらやってのける。このキャラクターは少なくとも日本のドラマにおいて非常に珍しく新鮮だ。

 はからずも皆実のバディ兼お目付け役としてともに捜査をすることになった護道心太朗役の大泉洋。昨年のNHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』では、鎌倉幕府の祖・源頼朝を軽妙かつ恐ろしい一面も宿す人物として立体的に立ち上げ高い評価を得た。ご存じの通り、彼も国民的スターの一人で、『NHK紅白歌合戦』の司会をはじめ、アドリブ力を試されるMCやバラエティ番組でも多大な存在感を示しながら、俳優としてもさまざまなキャラクターに挑んでいる。

 大泉のプレイヤーとしての大きな特徴が、投げの芝居も受けの芝居も両方こなせる点だと思う。『鎌倉殿の13人』(NHK総合)では投げの芝居の割合が多く、小栗旬演じる北条義時を翻弄していたが、今作では皆実に振り回される役回り。これも頼朝役からの“逆転現象”かもしれない。

 また、福山と大泉の仲の良さは多くの人が知るところであるが、その2人が劇中で少しずつ距離を縮めていく空気感も面白いし、もはやネタと化している大泉の福山の声真似をしっかり演出に取り入れるあたり、スタッフもそこを意識し、にんまりしながら番組を作っているのが見てとれる。さらに福山の当たり役、『ガリレオ』(フジテレビ系)の湯川学が放つ決めぜりふ「実に面白い」を彷彿とさせる皆実の「アグリーです」も視聴者の心をくすぐるポイントだろう。

 この絶対的安定感を醸す2人に加え、実力も人気もある助演陣の多彩さにより、良い化学反応が生まれている『ラストマン』だが、もうひとつ注目したいのが脚本(黒岩勉)の構成。

 日曜劇場との冠の通り、『ラストマン』が放送されるのは日曜日の21時。つまり、翌日から始まる1週間に向けて多くの視聴者が自宅で気持ちの切り替えをし始める頃合いであり、朝ドラや大河ドラマに次ぐレベルで幅広い年齢層や属性の人々がターゲットになる枠だ。さらに昨今ではSNSでのバズりも作品のヒットには欠かせない。との状況から、この枠で視聴率的に成功するドラマのキーワードは「さまざまな属性にリーチするわかりやすさ」と「視聴後のスッキリ感」、「あざとくないSNSへの書き込み誘導」ではないだろうか。

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