『合理的にあり得ない』に“抜け感”を加える久実を好演 白石聖の演技の真骨頂は表情にあり

『合理的にあり得ない』白石聖が与える抜け感

 明るくてのんきな久実の雰囲気は、演じている白石にピッタリだ。だが、彼女の演技の真骨頂は、笑っている時以外の表情にあるように思う。例えば、父・慶介への不満を漏らしている時、久実は少し唇をへの字に曲げて不貞腐れた顔をした。涼子に叱られた時は、真っ直ぐ涼子を見ていた目線が右往左往しながら次第に下がっていき、言葉はしどろもどろになっていった。いつもは天真爛漫さを見せているからこそ、ちょっとした表情の変化で、その裏で抱えている悩みや自分でも気づいていなかった気持ちがはっきりとが浮き彫りになるのだ。

 また、涼子や貴山と違って、変に狙っていない久実の言動は、相手の本音を思わず引き出してしまう効果があるのではないだろうか。第2話で父親のことを「いなくなっちゃえばいいのに」と言った久実に貴山は珍しく語気を強めて「やめろよ」と言っていた。この時は貴山の過去があまりわかっていなかったため、「ムキになるなんて珍しいな」と違和感を感じるだけだった。だが、貴山に家族殺しの容疑をかけられたまま、植物状態になっている父親がいるなど貴山の過去が明らかになっていくにつれ、この時、発せられた言葉は貴山の本心から出たものだったと感じさせられる。

 涼子は、大嫌いな諫間慶介の弱みを握るために久実を採用している。もしかしたら今後、久実の存在がストーリーの展開に大きく関わっていくのかもしれない。そんなことをちょっと期待しつつ、久実が世間知らずのお嬢様から少しずつ成長していく様子を見守っていきたい。

■放送情報
『合理的にあり得ない~探偵・上水流涼子の解明~』
カンテレ・フジテレビ系にて、毎週月曜22:00〜放送
出演:天海祐希、松下洸平、白石聖、中川大輔、丸山智己、仲村トオルほか
原作:柚月裕子『合理的にあり得ない 上水流涼子の解明』(講談社文庫)
脚本:根本ノンジ
演出:光野道夫、二宮崇、倉木義典
プロデューサー:萩原崇、清家優輝
音楽:眞鍋昭大
制作協力:ファインエンターテインメント
制作著作:カンテレ
©︎カンテレ
公式サイト: https://www.ktv.jp/arienai/
公式Twitter:https://twitter.com/arienai_g
公式Instagram:https://www.instagram.com/arienai_g/

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