『合理的にあり得ない』天海祐希VS水野美紀が再び フィクションを成立させる演出の妙

『合理的にあり得ない』演出の妙

 因縁の相手との再会。しかも相手は助けを求めている。この依頼、受けるべきか、断るべきか?

 『合理的にあり得ない~探偵・上水流涼子の解明~』(カンテレ・フジテレビ系)2話連続の後編となる第5話では、上水流涼子(天海祐希)VS美容家・愛原樹里亜(水野美紀)第2ラウンドのゴングが鳴らされた。

 「窮鳥懐に入れば猟師も殺さず」というが、この2人の場合は趣が異なる。再会の感慨に浸る余韻もなく、出会いがしらの衝突事故のように顔合わせからの即バトル勃発は、前話を観た人にはおなじみの光景だ。あり得ない相手からのあり得ない依頼を笑顔で引き受けるのがプロである(決して金目当てではない)。依頼人に密着して悪事の証拠を探るのは、これが弁護士なら大問題だが、幸いなことに涼子は一介の探偵。というわけで、真紀(市川由衣)を死なせてしまった涼子にリベンジの機会がめぐってきた。

 目には目を、茶番には茶番を。涼子と貴山(松下洸平)のあり得ないトリックシリーズ、第5話は劇団・上水流エージェンシーの寸劇タイムだった。絡みが激しすぎて本気でボコっているようにしか見えない浩次(中川大輔)たちヤンキー軍団と、公園の滑り台から登場するヒーロー(小学生か)、なんちゃって津軽弁になんちゃってグルメ。文字にするのも楽しい珍プレー集は、なぜかドンズバでターゲットに命中する。

 フィクションだからと言って何でも許されるわけではない。現実からかけ離れた設定や荒唐無稽すぎる描写は作品への没入感をさまたげ、視聴者を白けさせてしまう。この点、本作はきわどいコースを狙っているように感じる。一般的に自由度の高い小説からビジュアル面で納得させなくてはならない映像への変換は、スタッフ・キャストの腕が試されるところだ。

 コスプレやセット・小道具を駆使した演出は、元弁護士のワケあり探偵が活躍する本作にマッチしており、登場人物の特徴をデフォルメしたキャストの大仰な演技が、サスペンスともコメディともつかない作品のトーンを形づくる。寸劇風の劇中劇は、メタフィクショナルな諧謔を意図する本作を象徴するものだった。などと堅苦しいことは抜きにして、適当な気持ちで流せるのが『合理的にあり得ない』の良いところだ。現に多くの人が、本作を観ながらくつろいだ夜のひと時を過ごしているのがその証拠である。ひとまず制作陣の狙いは成功していると言ってよい。

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