福山雅治だから成立した『ラストマン』の壮大な挑戦 皆実広見は令和の新たなヒーローに

福山雅治だから成立した『ラストマン』

 「私は多くの人に助けられて生きてきました。不必要な人間なんていないんです」と第1話で連続爆破事件の首謀者・渋谷英輔(宮沢氷魚)に、こう諭すシーンがある。

 だがこの言葉は、渋谷に対する優しさから発せられただけではなかった。「あれは、マイクの先にいる人たちに聞かせたんですよ。ああいうの好きでしょ、日本人は。これで私の好感度は爆上がりです」という“腹黒さ”も皆実は併せ持っている。

 さらに「ハンディキャップのある人が、全員聖人君子だと思ったら大間違い。私たちは特別でもなんでもありません」とさらりと言ってのける。多くが無意識に抱いている障がい者のパブリックイメージを軽やかに覆してみせる。

 障がい者のイメージを変えるという点において、皆実と接する心太朗の戸惑いも実にリアルだ。皆実に「エスコートしてください」と言われ、心太朗は歩き始めた頃の子どもの手を引くように「一、二。一、二」と両手で支えようとする。それに対して皆実は「まっすぐ前を向いて、右腕を貸してください」と伝える。視聴者の多くは、心太朗を通して障がい者との接し方を事前に学んでいくことができるのだ。

 このドラマは、障がい者を主人公に据えたこと自体がチャレンジングでメッセージ性をはらんでいるが、さらに毎話ごとに、現在の日本が直面している課題が描かれている。例えば、第1話はいじめ、引きこもり、ヤングケアラー、無敵の人。第4話は痴漢、盗撮、冤罪がテーマになっている。そこに、41年前の心太朗の父の事件にまつわる“護道家”や“皆実家”の因縁も絡まってきそうだ。

 非常に複雑で、壮大な挑戦。それを引き受けるには、やはり福山雅治という大きな器が必要であるし、その大役を福山は見事に引き受けている。

■放送情報
日曜劇場『ラストマン-全盲の捜査官-』
TBS系にて、毎週日曜21:00~21:54放送
出演:福山雅治、大泉洋、永瀬廉(King & Prince)、今田美桜、松尾諭、今井朋彦、奥智哉、王林、寺尾聰、吉田羊、上川隆也
脚本:黒岩勉
演出:土井裕泰、平野俊一、石井康晴、伊東祥宏
撮影監督:山本英夫
プロデュース:益田千愛、元井桃
編成プロデュース:東仲恵吾
音楽:木村秀彬、mouse on the keys
全盲所作指導:ダイアログ・イン・ザ・ダーク
協力:日本視覚障害者団体連合
製作:TBS
©︎TBS
公式Twitter:@LASTMAN_tbs
公式Instagram:LASTMAN_tbs

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