『良くも、悪くも、だって母親』イ・ドヒョンが怪物から7歳に! 陰から陽に育て直せるか
一方、7歳になってしまったガンホは、幼なじみのイ・ミジュ(アン・ウンジン)の双子の子どもたちとともに遊び、屈託なく純粋無垢な姿を見せる。イ・ドヒョンが、心が凍った眼差しで、人の命をも奪ってしまう冷酷な怪物検事で見せた演技から一転、キラキラとした幼子の生きる光を灯した眼差しへと転じるさまが素晴らしい。陰から陽へと、極から極へ一気に振れた表情は、イ・ドヒョンの演技力の高さの証明だろう。『18アゲイン』では、高校生の姿をした37歳のくたびれた中年男を演じ、イ・ドヒョンの“中の人”が、本当に悲哀に満ちた中年男性に見えてくるという見事な演技を見せたが、本作では、イ・ドヒョンの“中の人”が7歳の男の子に見えてくるという秀逸な演技を魅せている。
イ・ドヒョン演じるガンホが、事故に遭う前に、亡き父チェ・ヘシク(チョ・ジヌン)が、ウビョクグループ会長のソン・ウビョク(チェ・ムソン)とテスの手により陥れられたことを掴み、ウビョクとテスに近づいたことが明かされた。第1話、第2話では、思わず目をそむけたくなる、ウビョクの身震いするような恐ろしさが、ヨンスンの作ったキンパによって描かれていた。第3話、第4話では、ガンホを掌で転がすかのようなウビョクに、震撼させられる。ガンホは、ウビョクによって破滅への道を歩ませられたのだが、そのスタートは、残念ながら息子を愛して道を間違えたヨンスンの子育てなのは否めない。ヨンスンが思い描いたガンホの未来とは、かけ離れた真逆の怪物としての人生を歩んでいたガンホ。そのガンホの実態を知ったヨンスンは、7歳となったガンホを殴り、泣き喚くのだ。しかし、目の前のガンホは、そんな母の姿を見て怯え、一緒に泣くしかできない子供となっている……。
ガンホは、村の子どもたちや、人々と触れ合ううちに、法律に関わる話が出ると、途端に法律用語を話しだし、周りの人を驚かせる。全てが失われたかに見えたが、ガンホの中には、これまでの記憶が残っているのだ。姿の見えないヨンスンを探して不安に駆られた瞬間、ガンホの脳裏に事故の記憶も一瞬蘇る。いずれ全てを思い出すのだろう。村では、ガンホの初恋の相手である、双子の母親のミジュも、ソウルでの生活に失敗し、村に戻り、2人は再会することになる。
子育てに失敗したことを知ったヨンスンは、ガンホを初めて養豚場へと連れて行き、豚たちの前で話をする。ヨンスンはガンホの真心を育て直すことができるのだろうか。ヨンスンが毒親として、ガンホから奪ってしまったこの世界への希望や、愛、優しさ、ガンホ本来の人間らしさ。その全てを、ヨンスンはガンホに与え、ガンホは成長し直すことができるのだろうか。事故に遭う前のガンホが、昇りつめた先に見たものが、いずれ記憶を取り戻すだろうガンホによって、どう統合されるのだろうか。陰の世界にいたガンホには見いだせなかった光を、陽へと転じたガンホなら、きっと見いだせると信じたい。今まで「愛情」の表現の仕方を間違えてきたヨンスンが、心を鬼にしなくても済む子育てをしてくれる姿を見ることができると期待しながら、物語の行方を追っていきたい。
■配信情報
『良くも、悪くも、だって母親』
Netflixにて配信中
出演:ラ・ミラン、イ・ドヒョン、アン・ウンジン
原作・制作:シム・ナヨン、ペ・セヨン
(写真はJTBC公式サイトより)