『水星の魔女』スレッタとグエルが再び決闘 散りばめられたセルフオマージュが表すもの

『水星の魔女』スレッタとグエルが再び決闘

 二度と見ることができないと思っていたスレッタとグエルの決闘が始まった。『機動戦士ガンダム 水星の魔女』第17話「大切なもの」では、プロスペラからクワイエット・ゼロ計画を引き継いだミオリネがグエルと共闘することを決意した。

※本稿には『機動戦士ガンダム 水星の魔女』第17話のネタバレを含みます。

 これまで幾度もセルフオマージュが散りばめられていた本作だが、第17話の象徴的なシーンでもそれが見られた。温室でいつものように植物の世話をしていたスレッタのもとに、突然エランがやってくる。スレッタは静止を促すが、その言葉に耳を傾けずズカズカと室内へと入ってきたエランの目には生気は感じられない。スレッタをどうにかしてしまいそうな殺意に近い目だ。エランがスレッタのもとを訪れた目的はエアリアルを自分のものにすることで、「僕のこと、好きなんだろ?」とかつてのエランからは考えられない強引な言葉でスレッタをせめ立てていく。バッサリと「好きじゃない」と言い切ったスレッタにエランは力づくでエアリアルを奪い取ろうとするが、そこに現れたのは地球から戻ってきたグエルだった。

 第1話では温室にズケズケと入り込んできたグエルが、第17話ではエランを止める立場で登場する。ミオリネ→スレッタ、エラン→グエルという構図へと変化しており、第1話ではスレッタから平手打ちをされていたグエルだが、今度はグエルがエランを止めにかかる。その際にグエルはスレッタを守るため、再び同じ言葉をエランに投げかけていたのが印象的だった。グエルの言葉はかつてのシーンと呼応する。

「こいつに何をした?」
「こいつに何をしている?」

 かつては温室を荒らしていた暴君として描かれていたグエルが、父親を亡くし、プライドも捨て、会社のために成長した姿を見せる。プライドにとらわれて余裕がなかったグエルも、今では大人びた顔つきに変わり、感情的になることもない。暴走したエランを押さえつけ、力で納得させるグエルは実に頼もしい。

 「逃げたら一つ、進めば二つ」。グエルはスレッタから教えられたこの言葉のおかげで、父親から逃げていた過去を捨てて前を向くことができた。そんなグエルはスレッタに「好き」と改めて告げると、顔を赤らめて動揺を見せていたのが微笑ましいシーンだった。そして、その言葉を聞いたスレッタの目にも人間らしい表情が見えた。プロスペラの言いなりに生きてきたスレッタには自分の意思というものが感じられず、どこかロボットのような無機質さが違和感としてあったが、グエルの告白にスレッタは少しばかりの動揺を見せていたような気がする。グエルの言葉をどう受け取ったのかまではわからないが、少なくともスレッタの中で何かが変わりつつあるのは確かだろう。

 第3話以来となるスレッタとグエルの決闘シーンも見ものだった。そもそもこれは、プロスペラからクワイエット・ゼロ計画を引き継いで総裁選に出馬することを飲み込んだミオリネから始まったものだ。そこでミオリネはグエルに後ろ盾になってほしいと持ちかける。それは当然だ。ミオリネが総裁になるためには強固な後ろ盾が必要だし、グエルもジェターク社を立て直すためにバックアップを必要としている。つまり、Win-Winな関係がここで成立しているというわけだ。最初は決闘を渋ったグエルも、会社のために受け入れることに決めた。

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