『水星の魔女』の熱狂を生んだ制作陣の熱い仕掛け SNS時代にマッチしたガンダムに

『水星の魔女』が熱狂を生んでいる理由

 『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ』以来、7年ぶりとなるガンダムの新作テレビシリーズとして大好評を博した『機動戦士ガンダム 水星の魔女』。2023年1月のSeason1放送終了後も公式から様々なプロモーションやイベントが仕掛けられ、ファンの熱気は下がらないまま、いよいよ4月9日からSeason2の放送が始まる。近年のガンダムシリーズには類を見ないほど、ファンサイドの盛り上がりを見せる『水星の魔女』だが、これには送り手側(スタッフ)と受け手側(ファン)の相互作用が上手く働いた結果に見える。なぜここまで大きなファン層を獲得できたのだろうか。

『水星の魔女』に込められた『ガンダム』の“自由”さ 岡本拓也プロデューサーに狙いを聞く

“ガンダム”とひとくちに言っても、そのシリーズの広がり方は果てしなく膨大だ。原点である『機動戦士ガンダム』(1979年)から始ま…

 放送開始直前に行ったインタビューの中で岡本拓也プロデューサーは「(10代の人の)身近な環境から始まる作品があっても良いんじゃないか、ということから学園を舞台に」「幅広い世代の皆さんに喜んでいただけるもの」と発言している。今までロボットアニメを、ガンダムを敬遠していた若年層にいかにアピールするか。同時に今までガンダムシリーズを観ていた30代以上の人にも喜ばれる新作を、という取り組み方。そうした難しい課題を超えて行くためのプロモーション活動が実に巧みだった気がする。

 順を追って見て行くと、『水星の魔女』の告知が始まった2022年春に、スマートフォン向けアプリ「ガンダムナビアプリ」をリリース。現代の10代~20代の人ならほぼ持っているであろうスマホを通じ、作品アーカイブ、動画、ニュースを網羅した、あらゆるガンダム情報にアクセスできるアプリだ。次にイベント会場に出かけると、それをきっかけに動画視聴が出来る『水星の魔女』の前日譚『PROLOGUE』の仕掛け(イベントに出かけないと観られないアニメというレアさが興味を惹いた)。そしていよいよの放送開始だ。

 編入先の高校でからかわれても、自分が馬鹿にされていることに気づかないほどポジティブで、相手との距離感をグイグイ詰めて行く女性主人公スレッタ・マーキュリー。ボリュームのあるクセ毛と太い眉の丸顔が狸を連想させるのか、視聴者からタヌキの愛称で親しまれ、吃音がちの台詞回しともども等身大の魅力を放つキャラクターである。

 Season1の放送中から作中で発せられた台詞や描写などがSNSのトレンドにあがると、『水星の魔女』公式アカウントが、それに対して感謝のツイートを発信したり、ファンの盛り上がりぶりを宣伝活動に反映させる様子も見られた。顕著な例が、1クール前半戦をまとめたスペシャル特番のナレーターに、愛されキャラのグエル・ジェタークを起用している点だろう。グエルは学園ものあるあるの、高圧的で嫌味な男として画面に登場しながら、スレッタに突如求婚したり、ツンデレお約束の台詞を発したりと変貌ぶりが楽しい奴だ。敗北や挫折の中からその都度成長する彼の姿に視聴者の好感度もグングンあがり、Season1終了後に配信用に作られた1クール後半戦を振り返るスペシャル特番でも、随所に現れて笑いを取っている。スペシャル特番は2本ともナビゲーター脚本に遊び心が溢れているので、こういう作りにもファンの熱気がフィードバックされているように思える。

まだ間に合う!『機動戦士ガンダム 水星の魔女』スペシャル特番

 振り返り特番だけでなく、イベントも熱い。スレッタと並ぶもう1人の主人公ミオリネ・レンブランが第7話で設立した、株式会社ガンダムのPR活動……という体裁で開催された体験型イベント「機動戦士ガンダム 水星の魔女EXPO」と、大型ビジョンやイラスト広告で渋谷一帯をジャックする大がかりな宣伝が3月に矢継ぎ早で行なわれた。

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