橋本環奈がラブコメで発揮する強み 『王様に捧ぐ薬指』綾華役は俳優としての“完成形”?

橋本環奈がラブコメで発揮する強み

 『王様に捧ぐ薬指』では、コメディ要素といえる部分はひたすら山田演じる新田東郷との掛け合いに注ぎ込まれている。すなわちそれは、あくまでも“ラブコメ”として劇中カップルが距離を縮めていくための重要な過程のひとつであり、それ以外にも心理的な距離を縮めるきっかけが随所に与えられる。それによって清々しい悪女でありつつも内なる苦悩が介入し、現実に存在しても無理がない、説得力のあるキャラクターになりうるのである。もっとも、役柄と演者の直接的な対比でのギャップではなく、演者と役柄の外面をほぼイコール化させてから、役柄の外面と内面でギャップを生むという点は、少女漫画ヒロインを演じた映画『午前0時、キスしに来てよ』の日奈々に近い。家族想いなところや寝相が悪いところもよく似ているだろう。

 第1話でいきなり東郷と結婚することになり、同僚からの不当な嫉みに対しては煽るような発言を見せながらも、ウエディングプランナーとしてトラブルがあった顧客に対して真摯なケアを行う点で、綾華というキャラクターの実直さが裏付けられる。また第2話で東郷の母・静(松嶋菜々子)の趣味に振り回される一方で、苦労して育ててくれた自分の両親への結婚記念日のプレゼントを考えるなど、家族との向き合い方が描かれることでも人間的な魅力が強調されていく。そして前回の第3話での新婚旅行パート。東郷が小夜(小林涼子)に片思いをしていたことを知りつつ、東郷とハチ(森永悠希)の和解を後押し。同時に綾華と東郷の関係にも変化が生まれ、綾華は高校時代の同級の神山(坂東龍汰)と再会する。

 これまでのコメディ作品で培ってきた技を、作品に必要なスパイスとなる程度まで抑制しながら散りばめ、まごうことなきラブコメヒロインに徹する。それだけに、ラブコメの王道が発揮されるシチュエーションに突入するこの先の展開は、橋本環奈の俳優としての完成形を観るうえで非常に理想的なものとなるはずだ。

■放送情報
火曜ドラマ『王様に捧ぐ薬指』
TBS系にて、毎週火曜22:00~22:57放送
出演:橋本環奈、山田涼介、坂東龍汰、長尾謙杜(なにわ男子)、小林きな子、若月佑美、三浦獠太、小林涼子、田仲陽成(Go!Go!kids/ジャニーズJr.)、高橋奏琉(ジャニーズJr.)、宮崎莉里沙、塚地武雅、利重剛、りょう、松嶋菜々子
原作:『王様に捧ぐ薬指』わたなべ志穂(小学館プチコミックフラワーコミックスα)
脚本:倉光泰子、関久代
演出:坪井敏雄、泉正英、宮崎萌加
プロデューサー:橋本梓、勝野逸未
製作:TBSスパークル、TBS
©︎TBS
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/ousama_tbs2023/
公式Twitter:@ousama_tbs
公式Instagram:ousama_tbs

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