『あなたがしてくれなくても』の先にあるものは? “悪者”がいないからこそのもどかしさ

『あなたがしてくれなくても』タイトルの意味

 楓は常にいっぱいいっぱいな人だ。夢だったファッション誌の仕事に就き、副編集長として忙しい毎日に追われ、セックスは疲れるものでしかない。編集長の圭子(MEGUMI)が言った「なんで男はさ、仕事して遊んで、浮気なんかもできちゃうのに。女が出世したいと思うと仕事だけになっちゃうんだろうって」には頷いた女性もいるはず。しかもいま女性は、「社会に進出して出世しろ」と、「子どもを産んで育てろ」の同時進行不可能な2本柱を求められている。

 楓は仕事に生きたい女性。やりたいことがあって、夢に向かって進むのは素晴らしいことだ。おそらく誠も、そんな君が好きだと言ってくれたのだろう。だが正直キャパオーバーと言っていい。誠に辛く当たってしまうのも、自分に余裕がないから。誠の優しさも、余裕に映ってイラついて、それで自己嫌悪に陥ってしまう。常にMAX状態でいるため、「今日くらい頑張れない?」のひと言も「私はこんなに頑張ってるのに!」と切れてしまった。自分しか見えていないから、まさか誠が心で泣いているなど露ほども思わない。

 誠のことは好きだ。だから仕事の合間を縫って、誠の母の病院へ、撮影で使ったカーディガンを届けもした。でも忙しすぎて、そのことすら頭から抜け落ちてしまう。ただ、編集長の「そんなことじゃ誰もついてこないよ」「自分だけが頑張ってるんじゃないんだよ」のアドバイスに、部下にきつく当たってしまったことを反省したことは、彼女の良さを伝えていた。さらに校了を迎えて少しばかり落ち着いた楓は、誠と向き合おうとする。しかし時すでに遅し。誠は楓に見切りをつけ、すでにすっきりとした表情になっていた。

『あなたがしてくれなくても』5/4(木)#4 恋が深まるほど、誰かが傷つく

 秀逸なタイトルによって、こちらの関心を誘いながら、実際に不倫ものへと展開するのは、かなり先になるのだろうと予想していた。だが、第3話という中盤にさしかかるより前に、不倫は始まってしまった。さらに第4話予告編を見るに、みちと誠は完全に想い合った関係に進んでいる。しかし“あなたがしてくれなくても、別の人がしてくれる”になるはずはない。タイトルの『あなたがしてくれなくても』の先に見えるものは何なのか、考え続けている。

■放送情報
木曜劇場『あなたがしてくれなくても』
フジテレビ系にて、毎週木曜22:00~22:54放送
出演:奈緒、岩田剛典、田中みな実、永山瑛太、さとうほなみ、武田玲奈、宇野祥平、MEGUMI、大塚寧々ほか
原作:ハルノ晴『あなたがしてくれなくても』(双葉社)
脚本:市川貴幸、おかざきさとこ、黒田狭
演出:西谷弘
プロデュース:三竿玲子
主題歌:稲葉浩志「Stray Hearts」(VERMILLION RECORDS)
挿入歌:稲葉浩志「ダンスはうまく踊れない」(VERMILLION RECORDS)
音楽:菅野祐悟
©︎フジテレビ
公式サイト:https://www.fujitv.co.jp/anataga_drama/
公式Twitter:@anataga_drama
公式Instagram:@anataga_drama
公式TikTok:@anataga_drama

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