『王様に捧ぐ薬指』山田涼介扮する東郷の愛らしさ 箱根旅行で“本物の恋”に発展!?
本心をなかなか語らない。でも、考えていることが手にとるようにわかる。わかりやすいのに、素直じゃない。もし近くにいたらちょっぴり面倒かもしれないけれど、そんな東郷を山田涼介が演じると魅力的に見えるから不思議だ。
火曜ドラマ『王様に捧ぐ薬指』(TBS系)第3話は、綾華とぶつかることで東郷の頑なな心がほどけていく様子が描かれた。幼い頃から親の敷いたレールの上を歩み、セレブとして育ってきた東郷。それゆえに、人の心に寄り添うことが少々苦手だ。
デザートのてっぺんに乗っているイチゴも、ラスト1コのアメも、欲しいと思ったら相手に許可も得ずにパクっと自分の口に放り込んでしまう。きっとそれを咎める人もいなかったのかもしれない。そんな東郷にとって、初めて本音で向き合ってくれた相手。それが小夜(小林涼子)だった。
東郷は新田ホールディングスの跡取りとして自分の影響力を嫌というほど味わってきたからこそ、気軽に本音を言えなかったに違いない。今の両親とのどこか形式張った会話から見ると、家族でさえ本心を語ることはなかったのではないか。
裕福だけど、どこか心から満たされない東郷に「たまにしんどくない? 強がんなくていいから、アタシたちの前ではさ!」とニカッと笑いかける小夜。これまで出会ったことのなかったタイプの彼女に、心を奪われたのも自然なことだったように思う。
“新田家の人間”という肩書きを抜きに、初めて“東郷”という個人で向き合ってくれた人。それは初恋でもあり、初めて心から友と呼べる女性だったのだろう。しかし、その恋心はずっと秘められたままだった。それも、もしかしたら新田家の呪縛によるものだったのかもしれない。自由奔放な小夜のことが好きだからこそ、しがらみだらけの自分の人生に引きずり込むわけにはいかない、と。
とはいえ、年齢を重ねるにつれて「王様」「キング」と、もてはやされるようになった東郷は、ますます小夜のようなタイプの女性と知り合うチャンスは減ったことだろう。両親があてがってくるお見合い相手も、畑のネットに引っかかったネコを助けるために東郷を身代わりに労働させるようなことは、おそらくしないタイプだったはずだ。
さらに、親友のハチ(森永悠希)と小夜が付き合い始めてしまい、東郷の恋心はますます行き場をなくしてしまっていたように見えた。ハチなら小夜を間違いなく幸せにできる。だから、祝福はしたい。でも、小夜を好きな気持ちをまだ整理できていない……そんなこじらせっぷりを山田がキュートに演じていく。言葉にしなくても、今何を思っているのかが顔に書いてある。そう言いたくなるほど、表情ですべてを語るような演技だった。
そのこじらせがピークのタイミングで、東郷は綾華と出会った。メリット婚という利害一致の関係性によって、初対面から本心丸出しでの言い争いをしてきた2人。ん? 小夜との初対面から恋心が芽生えていった経緯を思い返すと、東郷は「好きになることがない」とは言っていたが、最初から綾華がタイプど真ん中だったのでは!? なんてツッコミたくなる。
そして、綾華に自分では解くことを諦めてしまいそうなほどこんがらがった小夜への恋心をガシッと掴まれて「隣でウジウジされたらお酒がまずくなります」なんて言われたら、負けず嫌いな東郷も腹をくくるしかない。荒療治ではあったものの綾華のおかげで、ハチと小夜の結婚を心から「おめでとう」と言うことができた東郷。徐々に綾華に対する感情が変化していくのも、その眼差しから伝わってきた。