『舞いあがれ!』から『おとなりに銀河』へ 八木莉可子は“初恋の物語”の体現者だ

八木莉可子は“初恋の物語”の体現者だ

 『おとなりに銀河』は『good!アフタヌーン』(講談社)にて連載中の雨隠ギドの同名漫画を実写化したラブコメディ。ほぼ同時期からアニメ『おとなりに銀河』(TOKYO MX)もスタートしており、比較されることは必然となるが、筆者としては不思議と実写の方がアニメよりもはっちゃけた演出になっているという印象だ。制作統括には『しもべえ』(NHK総合)などの谷口卓敬、『古見さんは、コミュ症です。』(NHK総合)の高城朝子といった漫画原作のドラマを担当していた名前がクレジットされており、これまでの成功経験を生かしながら「ラブストーリー」「ファンタジー」「コメディ」といった原作のあらゆる要素を夜ドラという徐々に確立されつつあるフォーマットに落とし込んでいるのではないだろうか。

『おとなりに銀河』写真提供=NHK

 八木が演じるしおりは、流れ星の民の姫。漫画家の久我一郎(佐野勇斗)が、しおりの棘に触れたことにより婚姻関係の契りが結ばれる――といった、一度聞いただけではとっつきにくい壮大な設定が初回のラストに押し寄せてくるが、そこから展開されるのは一郎としおりの初々し過ぎる恋愛と、まち(小山紗愛)、ふみお(石塚陸翔)を交えた温かな家族の物語。第6話で描かれる嫉妬心の“もや”から、一郎への「好き」という感情に気づく八木の芝居は特に素晴らしい。言葉にならないというような感情が伝わる少し上擦った発声に、左右にコロコロと動く瞳、煌めいた眼差しと表情を浮かべるしおりは、自分の部屋で全身の力が抜けたように崩れ落ち悶絶。『First Love 初恋』や『舞いあがれ!』よりかはオーバーではあるものの、ティーン映画よりかは抑えたはっちゃけ具合の夜ドラ。その絶妙なさじ加減の中で、八木はしおりを生き生きと演じている。なぜ初恋の物語に八木が起用されるのか、という問いに一つの答えを出すとすれば、それは何色にも輝く煌めきだろう。作品毎に光の当て方を変えることで、また違った色、表情を見せてくれる。

 先述した『あさイチ』の出演は、八木にとって初の生放送であり、初のロケとなった。下北沢で人生初のレコードを体験し、あまりの美味しさにドーナツは完食。スタジオでのリアクションを見ていても、裏表のない人柄なことが分かる。出演中の「ファミリーマート」のCMがすでにそれに当てはまるが、ただただ料理を美味しそうに食べるグルメドラマもきっと適役なのは間違いないし、逆にどん底にダークな役で芝居の振り幅を見てみたくもある。どんな出来事も人生にとってはかけがえのないピース――そう思わせてくれるのが、八木莉可子である。

■放送情報
『おとなりに銀河』
NHK総合にて、毎週月曜~木曜22:45〜放送中【全32回】
出演:佐野勇斗、八木莉可子、小山紗愛、石塚陸翔、北香那、本多力、中田クルミ、大津尋葵、坂田梨香子、河井青葉、前川泰之ほか
原作:雨隠ギド『おとなりに銀河』
脚本:三浦有為子
音楽:小田切大
主題歌:有華「HAPPY DATE」
制作統括:谷口卓敬(NHK)、高城朝子(テレビマンユニオン)
プロデューサー:石井永二(テレビマンユニオン )
演出:岡下慶仁(テレビマンユニオン)、熊坂出、國領正行
写真提供=NHK

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