『らんまん』広末涼子の言葉に滲む母の大きな愛 “説得力”あるディーン・フジオカの龍馬も
4月3日より放送がスタートしたNHK連続テレビ小説『らんまん』。日本の植物分類学の礎を築いた植物学者・牧野富太郎博士の人生をベースにした本作は、第1話の冒頭から神木隆之介演じる主人公・槙野万太郎の“らんまん”さがすでに伝わるものだった。しかし、時は戻って描かれる幼少期は、決して明るいものではなかったようだ。病弱な万太郎(森優理斗)は第1話で分家の豊治(菅原大吉)らが「万太郎はいっそのこと生まれて来ない方がよかった」と言うのを盗み聞きしてしまう。第2話では、病床の母・ヒサ(広末涼子)にそのことを伝えにいく。
「お母ちゃんもいらんかった?」
子供が自分の母親に、自分なんて生まれなければ良かったかと聞くなんて、本当に悲しいことだ。ヒサが3度も流産を経験し、神様にお願いしてやっと授かったのが万太郎だという事実は、彼の質問をより残酷なものにさせる。しかし、広末涼子の絶妙な演技も映え、ヒサというキャラクターは病弱ではあっても決して悲観的ではないのが良い。神様は見えんでもいる、天狗だっている。お父ちゃんもいるよ、見えなくなっただけ。軽快にそう伝えていくヒサだったが、万太郎は子供ながらにリアリスト。「見えんなったら消えて終わり、それだけじゃ! わしもどうせ……」と言うが、そこで初めてヒサは声を荒げる。
「そんな悲しいこと言わんとって。これだけは忘れんとって。おまんは大事な子じゃ。お母ちゃんの宝物」
そんな母の言葉にも納得できず、万太郎はまだ体力も回復していないのに再び外に飛び出してしまった。向かったのは、母が万太郎が授かるようにお願いしたという裏山の神社。そこで、万太郎は「天狗」と名乗る謎の武者(ディーン・フジオカ)に出会う。
神様を阿呆呼ばわりする万太郎を笑いながら、本当に天狗や神の類のごとく神々しい登場の仕方をする、この男。万太郎の話を聞きながら自分も寝小便をしたことがある、怖い姉がいる、など相槌を打っていく彼こそ坂本龍馬である。実は龍馬は豪商の分家出身で、同じように子供の頃からひ弱であったり、母が病弱で早くに亡くしているなど、万太郎と似たような生い立ち・境遇だ。そんな彼だからこそ、万太郎の気持ちに寄り添って勇気を与えてくれるかもしれない。彼との出会いが、万太郎の人生のターニングポイントになる可能性は高そうだ。坂本龍馬はこれまでに大河を含め、何度も映像化されてきたキャラクターだが、ディーン・フジオカの演じる龍馬は少し焼けた肌の色が男らしく、そのビジュアルの説得力が強い。声色や話し方もものにしていて、今後の登場にも期待したいが、彼はこの1867年に京都の近江屋で中岡慎太郎と共に暗殺されてしまう。