『らんまん』森優理斗演じる万太郎の切ない幼少期 “役割”との葛藤の物語が幕を開ける

『らんまん』“役割”との葛藤の物語が開幕

「おまん……誰じゃ?」

 植物は“恋人”だから、採集スタイルはいつもスーツに蝶ネクタイ。それほどまでに植物を愛する気持ちをバネに、幕末から昭和へと移り変わる激動の時代を天真らんまんに駆け抜けた主人公・槙野万太郎の物語が始まる。

 「日本の植物分類学の父」と呼ばれる牧野富太郎の生涯をモデルにした連続テレビ小説『らんまん』(NHK総合)。主演の神木隆之介が無邪気な姿を見せる笑顔らんまんな幕開けとは対照的に、第1話では“蔵元の跡取り息子”として生まれた万太郎の切ない幼少期が描かれた。

 時は1867年の土佐・佐川村。万太郎(森優理斗)は縁の下に潜り込み、そこに芽吹いた双葉に魅せられていた。そんなのんびりとした万太郎をよそに、大勢の人々が家の中を走り回る。この日、造り酒屋の「峰屋」はもろみの仕込みがすべて終わったことを祝う“甑(こしき)倒し”の日を無事に迎えた。そのため、女中たちは半年間働いてくれた蔵人たちを労う祝宴の準備で大忙しなのだ。その裏では、米を蒸した甑を洗う蔵人たちの嬉しそうな歌声が響く。

 彼らを番頭の市蔵(小松利昌)とともに束ねるのが、夫と息子に先立たれた万太郎の祖母・タキ(松坂慶子)だ。佐川家の領主・深尾家の御用掛を代々務める槙野家は、名字帯刀を許された豪商。また、土佐で酒造りを許されている蔵元の中で最も由緒正しき家柄の一つでもあるこの家の当主は実のところ、わずか5歳である万太郎だった。しかし、まだ幼いゆえに、体が弱く家の手伝いすらもままならない万太郎に代わり、タキが当主の役割を担っているのである。

 一方、まだ自分がどういう立場にあり、周囲からどんな振る舞いを期待されているかを理解しえない万太郎は天真らんまんに日々を送っていた。立派なごちそうを前に目を輝かせる万太郎は、それを友人の寛太(横井仁)におすそ分けすべく家を飛び出す。そんな万太郎のことを「すぐ熱出すくせにじっとしておれん。どればあ、心配かけちゅうがか分かってないがよ」と病弱な母・ヒサ(広末涼子)を看病しながら愚痴る姉の綾(太田結乃)。その心配はやはり的中し、万太郎はずっと楽しみにしていたこの大事な日に熱を出してしまうのだった。

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