『舞いあがれ!』“ただいま”と“おかえり”に凝縮された思い 全てが繋がった最終週
こんなにうれしい「ただいま」はなかった。『舞いあがれ!』(NHK総合)最終話直前の第125話では貴司(赤楚衛二)が帰国し、空飛ぶクルマが完成した。
路地の向こうから現れたのは、会いたかった人の笑顔だった。ロックダウン明けのパリから日本へ。歩(安井姫壱)の投じた紙飛行機を拾い上げ、舞(福原遥)と顔を見合わせる。会えなかった時間と距離、積み重なった無数の感情が「ただいま」と「おかえり」に凝縮されていた。主題歌「アイラブユー」の<道のりと時間を花束に変えて/君に渡せたらいい>を思わせる再会シーンだった。
時は経ち、それから6年。舞たちはもうマスクをしていない。コロナ禍に負けず、刈谷(高杉真宙)と舞は、空飛ぶクルマの実用化に向けて課題を一歩ずつクリアしてきた。仲間たちと手を携えて進む姿は、PR映像で確認することができる。そして、ついにこの日がやってきた。年が明けて2027年1月31日に空飛ぶクルマ「かささぎ」の運行が開始される。
「織姫と彦星を引き合わせるために空に橋を架けた鳥」から名付けられた機体は、独特のフォルムを持っていて、オープニング映像の紙飛行機が空へ舞いあがる時の姿に似ている。多くの人の協力なくして、空飛ぶクルマは実現しなかった。貴司の『トビウオの記』に綴られる舞の奮闘を遠いパリで知る八木(又吉直樹)。妻をそばで見守ってきた貴司の思いは<深海の星を知らない魚のためカササギがこぼした流れ星>に見ることができる。星を知らない魚は歌人で、大空をつなぐカササギの願いが流れ星のように届いて、そこに言葉が生まれる。その願いは多くの人の夢を載せる翼に変わる。