『舞いあがれ!』赤楚衛二にのしかかる期待と重圧 貴司が聞きたいと思う“声”は?
貴司はその対象との距離感をとても大切にする慎重派だと思うが、少しでも迷いがあるままに放った歌が世間一般的には良しとされ、また同じようなアウトプットを求められることに対して恐れと同時に疲労を感じ、そして辟易もしている。
デラシネに来ていた中学生の陽菜(徳網まゆ)に「言葉がいっぱいあんのはな、自分の気持ちにぴったりくる言葉を見つけるためやで」と話す貴司の姿が思い出される。そうやって言葉に対しても常に誠実に正直に向き合ってきた彼だからこそ、今は“自分の気持ち”が閉じてしまっている中、そもそも“ぴったりくる言葉”など出てくるはずもなく、“冷たい海の底”に潜伏している状態なのだろう。そしてきっと貴司はこの自分自身の現状を打開し救済になり得るのもまた短歌でしかないことも経験値上わかっているのだろう。だからこそ舞に最初こそ「短歌やめようって思う。書かれへんねん、どうしても。もうしんどい、離れたい」と言っていたものの、「やっぱり歌はやめたくないって思ってまう」と打ち明けていた。
何か大義名分から離れて、日常生活からも離れてみた時に、貴司はまた息を吹き返すだろうか。
「誰の声が聞こえる? 話したいこと見つかったら言葉にしてみ」
この八木の伝言にある通り、貴司の心が動き出した時、彼は誰とどんな言葉を交換したいと思うのだろうか。
■放送情報
NHK連続テレビ小説『舞いあがれ!』
2022年10月3日(月)から 2023年4月1日(土)まで
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00 〜11:15
出演:福原遥、横山裕、高橋克典、永作博美、赤楚衛二、山下美月、目黒蓮、長濱ねる、高杉真宙、山口智充、くわばたりえ、又吉直樹、吉谷彩子、鈴木浩介、高畑淳子ほか
作:桑原亮子、嶋田うれ葉、佃良太
音楽:富貴晴美
主題歌:back number 「アイラブユー」
制作統括:熊野律時、管原浩
プロデューサー:上杉忠嗣
演出:田中正、野田雄介、小谷高義、松木健祐ほか
主なロケ予定地:東大阪市、長崎県五島市、新上五島町ほか
写真提供=NHK