『スタンドUPスタート』大陽の情熱に心動かされる 『相棒』を想起させる冷静な反町隆史

『スタンドUPスタート』大陽の情熱に感動

 叔父で副社長の義知(反町隆史)の恨みがここまで根深いとは……絡まり合った糸はそう簡単には解けない。『スタンドUPスタート』(フジテレビ系)第10話では、義知がさらに三星兄弟を追い詰める“三ツ星の終わりの始まり”が描かれ、ついに三星兄弟が手を組むことになる。

 義知は三ツ星エネルギーで働く八神圭吾(栁俊太郎)を使って、今度は三ツ星重工で長年に渡り不正検査が行われてきたという記事が週刊誌に出るよう仕込む。この責任をとって辞任することになった大海(小泉孝太郎)。そしてそんな兄を救うべく自称“人間投資家”の大陽(竜星涼)が始動した。

 八神は大陽から全てを奪うべく、彼が投資しようとしていた東京英明大学の大学生・三上珠緒(田鍋梨々花)と准教授の河野幸(星野真里)に彼の悪い噂を吹き込み、自分たちが代わりに出資すると名乗り出る。しかし、自身を陥れようとしている卑屈な今の八神を前にしても変わらぬ大陽のスタンスに触れ、さらにどんどん、三星兄弟への敵意と執着を剥き出しにし、むしろ誰よりも人の価値の有無を重視する義知の姿を目の当たりにし疑問を抱き始める。八神は義知が思い描いている三星兄弟への復讐劇の綻びになりそうだ。

 義知は大海を追放し自分が社長になることが望みだと明言し、三ツ星重工の根本を揺るがしかねない今回の不正報道の大打撃についても「壊れたら壊れたっていい」と事もなげに言ってのける。かつて、自身の兄で三星兄弟の父親である前社長・匡邦(大友康平)に見込まれ「一緒に歴史を変えよう」と言われたことが義知はきっと嬉しかったのだろう。そしてその想いに全力で応えたいと歯止めが効かなくなり無理をしてしまう。業績を回復させよう、そして少しでも匡邦の役に立ちたい、認められたいという彼の行き過ぎた想いは、下請け会社の社長の命を奪ってしまう。匡邦にはこの一件で「ボーダーラインを弁えない者」「三ツ星にとって何の価値もない人間」だと烙印を押されてしまう。

 憧れだった匡邦のそばにいるべきは、そしてゆくゆくその座に就くのは自分であるはずだったのに、自分であるべきなのに……自身ばかりが泥をかぶっているうちに三星兄弟に次期社長のレールが敷かれていたのが、どうにも納得できず義知は許せないようだ。

 底知れない積年の恨みを覗かせる義知を体現している反町は、ここのところクールでつかみどころのないポーカーフェイスな役どころが続いているようにも思える。『オールドルーキー』(TBS系)ではスポーツマネジメント会社の社長・高柳役を演じ、本作の設定同様に高橋克実演じる社員の上司役を務めた。ここでも若かりし頃はスポーツに対する並々ならぬ情熱があったものの、今はかなりビジネスライクに周囲と対峙する冷静沈着で冷徹な部分のある社長像を熱演した。『相棒』(テレビ朝日系)season14〜20では水谷豊とW主演を果たし、突拍子もない杉下右京(水谷豊)に冷静に突っ込み、適度な距離感を保ち続ける落ち着き払った相棒・冠城役を好演した。反町と言えばかつては『GTO』(フジテレビ系)での型破りな高校教師・鬼塚英吉役を筆頭に、破天荒かつワイルドで権力に歯向かうような役どころの印象が強いが、もちろん芸歴も年齢も重ねたことも大きいのだろうがここのところはむしろ鬼塚が噛みつきそうな相手側を演じることが多いのが興味深い。

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