『舞いあがれ!』『エール』朝ドラが向き合う“生みの苦しみ” 貴司はどう乗り越える?

『舞いあがれ!』生みの苦しみを描く朝ドラ

『おちょやん』千代がみんなの「お母ちゃん」に 一方、過去の過ちに縛られたままの一平

千代(杉咲花)が母親役を演じるラジオドラマは大盛況。千代は多くの人から「お母ちゃん」と呼ばれ、親しまれるように。だが連続テレビ小…

 創作に苦しむキャラクターが既婚者の場合、そのパートナーも同時に悩まされることになる。それによって結果的には裕一と音のように夫婦の絆が深まるパターンがほとんどなのだが、2020年度後期の『おちょやん』は違った。同作でスランプに陥ったのは、ヒロイン・千代(杉咲花)の夫である一平(成田凌)だ。俳優であり劇作家でもある一平は父のような存在だった千之助(星田英利)が自分の劇団を去って以降、一向に脚本が書けなくなってしまう。そんな夫を千代は黙って見守っていたのだが、なんと一平は劇団の新人女優と一夜の過ちを起こし、妊娠させてしまうのだった。これには視聴者から非難轟々。千代は彼の元から姿を消し、一連のスキャンダルが世間に明らかになったことで劇団の評判も落ちてしまう。

 こんなにも悲しい結末を導いてしまうこともある“生みの苦しみ”を、かつて貴司に短歌の素晴らしさを伝えたデラシネの八木(又吉直樹)は、冷たく深い海に潜り、底に咲いた花を取りに行くようなものであると表現した。そうすれば、船の上=俗世でもしばらく息ができるのだと。

 八木が表現するように、底に咲いている花を必死で掴み取ろうと海の中でもがくような姿を見るのは視聴者としても心苦しい。だが、彼らが花を手に水の中から出てきた瞬間は、私たちも肺に一気に空気が入り込むようなカタルシスを味わうことができる。自分がスランプに苦しむ中でも家族に一切当たることなく、舞からの仕事の相談にも親身に乗る心優しい貴司。どうか彼が海の底に咲いている花を手に水中から顔を出す日を願っている。

■放送情報
NHK連続テレビ小説『舞いあがれ!』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00 〜11:15
出演:福原遥、横山裕、高橋克典、永作博美、赤楚衛二、山下美月、目黒蓮、長濱ねる、高杉真宙、山口智充、くわばたりえ、又吉直樹、吉谷彩子、鈴木浩介、高畑淳子ほか
作:桑原亮子、嶋田うれ葉、佃良太
音楽:富貴晴美
主題歌:back number 「アイラブユー」
制作統括:熊野律時、管原浩
プロデューサー:上杉忠嗣
演出:田中正、野田雄介、小谷高義、松木健祐ほか
主なロケ予定地:東大阪市、長崎県五島市、新上五島町ほか
写真提供=NHK

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