『アルマゲドン』は超一級の総合娯楽! 世紀末に狂い咲いた超大作を3つのポイントから解説

超一級の総合娯楽『アルマゲドン』3つの魅力

 地球に巨大隕石が落ちてくる! 地球壊滅を阻止するために、隕石に穴を掘って内側から爆破しよう! そのために穴を掘る専門家を宇宙へ送り込むのだ! ……映画監督マイケル・ベイが、この突飛な企画をディズニーに持ち込んだところ、会議室はテンションがMAXに。会社の偉い人たちも「1998年の夏の超大作として、気合入れて宣伝しまくって公開しよう!」とイケイケのGOサインを出す。拍子抜けするほどアッサリと企画が通ったが、しかし大きな問題があった。実はこの時点で脚本が完成していなかったのである。

 きたる3月17日、日本テレビ系『金曜ロードショー』で『アルマゲドン』(1998年)が地上波放送される。地球に隕石が迫り、それを破壊するためにブルース・ウィリスやベン・アフレックをはじめとするクセ者揃いの石油採掘(穴掘り)のプロたちが宇宙へ飛ぶ。刻一刻と迫る衝突の中、彼らは懸命に穴を掘り続ける。果たして奇跡は起きるのか? 人類は救えるのか? そんなあらすじの同作は、エアロスミスの「ドワナクローズマイア~イズ♪」の主題歌でもおなじみ、90年代を代表するSFパニックアドベンチャーの傑作だ。公開当時の批評家ウケは最悪だったが、興行的には大ヒット、そして現在もこうして「みんなが観たい名作」として熱い支持を集めている。今回はそんな『アルマゲドン』の撮影秘話を交えつつ、この世紀末に狂い咲いた超大作の魅力について語っていきたい。

 『アルマゲドン』の魅力は、大きく分けて3つある。1つは監督、2つ目は役者、そして3つ目は徹底的な制作陣の娯楽至上主義である。

 1つ目の監督とは、永遠の大爆発野郎マイケル・ベイのことである。ベイやんといえば、『トランスフォーマー』(2007年)シリーズで街を破壊しまくってきた有り余る破壊衝動と、ミュージックビデオやCM業界で培ったパワフルでギラギラな映像で、良くも悪くもド派手な映画を作ればハリウッド随一の人物……とは言っても、『アルマゲドン』の頃はまだまだ映画業界的には新人。『バッドボーイズ』(1995年)と『ザ・ロック』(1996年)を当てて勢いはあったが、どちらもアメリカでは暴力/乱暴な言葉遣いなどを理由にR指定(17歳未満は保護者同伴)を食らう。ベイやん自身も『バッドボーイズ』冒頭で「FUCK」を連打したことで、お母さんに「FUCKと言い過ぎ」と叱られ、おじいさんには「お前はもっと中産階級にウケる映画を作れ。そっちの方が稼げるぞ」とアドバイスされる始末であった(したたかな祖父である)。この頃、ベイやんは間違いなく人生の転機にいたと言えるだろう。過激なR指定映画で勝負をするヤンチャ監督で行くか、全年齢向きの超大作を作る道を歩むか。ベイやんは後者を選んで『アルマゲドン』ではFUCKを封印。いわば『アルマゲドン』は、ベイやんが大人の階段を上り始めた作品なのだ。

 しかしFUCK封印の一方で、映像的な“映え”を重視する点では一切妥協しなかった。NASAの全面協力のもと、本物のスペースシャトルの発射を15台のカメラで撮影。他にも軍に頼み込んで、普通なら撮影できない場所でバンバンにカメラを回したという。そんなスケールの大きなことをしていたかと思えば「ベン・アフレックの歯並びが気になる」といって、ベンアフを歯医者に送り込んで矯正させた。さらにリンカーン記念堂からプール越しにワシントン記念塔が見えるワンカットのために、立ち入り禁止区域に潜入して撮影を敢行。警備員につまみ出されたものの、見事に狙った通りのシーンをモノにした。そんな昭和の映画人のようなマインドで細部までこだわりつつ、もちろん火薬も大量投入。さすがにCGには時代を感じるものの、実写で撮影された爆破シーンは今観ても迫力満点だ。そして冒頭に書いた通り脚本があまりなかったことや、アドリブを重視するスタイルもプラスに働き、これが2つ目の魅力へ繋がってゆく。

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