『ブラッシュアップライフ』は優れた“テレビドラマ論”だ ありふれた無数の愛おしい“今”

『ブラッシュアップライフ』はテレビドラマ論

 また、少し別の、少しばかり飛躍した見方をしてみれば、これはある種のテレビドラマ論であるとも言えるのではないだろうか。本作は、子供の頃「ドラマクラブ」を結成するほどドラマ好きだった麻美たちの物語であり、実際麻美は3周目の人生でテレビドラマのプロデューサーになり、自分の人生をモチーフに本作と同じタイトルのドラマを作ったりもする。好きなドラマを羅列する彼女たちの会話、並びに麻美が3周目の人生で関わるテレビドラマの数々は、部分的ではあるが、まさにテレビドラマ史を辿っていく流れである。その後、麻美がパイロットとなり、現在放送中の朝ドラ『舞いあがれ!』(NHK総合)のヒロインの序盤の展開と同じ行程を辿ることは、偶然の一致なのかもしれないが、「ドラマ好き」視聴者としては、ドキリとせずにはいられない。福原遥演じる今期の朝ドラのヒロイン・舞は、麻美と違い、すんなりとパイロットになることはないのであるが、その分岐含めて人生というものなのかもしれないぞと思わされるのである。

ブラッシュアップライフ

 もっと言えば、「死後案内所」という、脚本家・バカリズムが扮する受付係がいる場所を中継点に、「平凡な女性」というある種最強の個性を持つ近藤麻美が、並大抵でない適応能力で、様々な職業に従事し、その時その時、多種多様な人生を生ききることは、どこか、「俳優」という職業そのものに似ていて、その1つ1つの人生がそれぞれに個別の「ドラマ」であるかのように見えてくる。裏を返せば、麻美たち/私たちが、愛してやまないテレビドラマというものは、無数の誰かの「人生」の物語である。「あったかもしれない人生」をそこに見出すと同時に、ありふれた「今」を愛おしく思うための。

 最終回で麻美は真里と共に、夏希と美穂を救うために、これまでとは桁違いの大きなミッションに挑む。150年以上生きてきた経験と「アイラブユー」で、果たして世界は救えるのか。さあ、私たちの「ドラマノート」の新しいページに、『ブラッシュアップライフ』と書き込む準備をしよう。

■放送情報
日曜ドラマ『ブラッシュアップライフ』
日本テレビ系にて、毎週日曜22:30〜放送
出演:安藤サクラ、夏帆、木南晴夏、松坂桃李、染谷将太、黒木華、臼田あさ美、鈴木浩介、バカリズム
脚本:バカリズム
演出:水野格、狩山俊輔
プロデューサー:小田玲奈、榊原真由子、柴田裕基(AX-ON)、鈴木香織(AX-ON)
チーフプロデューサー:三上絵里子
企画協力:マセキ芸能社
制作協力:AX-ON
製作著作:日本テレビ
©︎日本テレビ
公式サイト:https://www.ntv.co.jp/brushup-life/
公式Twitter:@brushuplife_ntv
公式Instagram:@brushuplife_ntv

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