『ブラッシュアップライフ』と視聴者を繋ぐ“平成J-POP” ノスタルジーをもたらす演出効果
話数を重ねるにつれ、音楽がドラマの内容を示唆する役割を果たしていたことが分かるのも見事だ。第7話で麻美が聴いていたRADWIMPS「スパークル」は映画『君の名は。』の主題歌であり、麻美がタイムリープによって大切な人を救う今後の展開を示唆していた。また麻美ら仲良し3人組が元々は宇野真里(水川あさみ)を入れた4人組だったことが明かされる第8話ではSPEED「White Love」をドライブ中に4人で踊るシーンがあるのだが、これは第2話、3人のドライブシーンで流れたPerfume「ポリリズム」と対応している。4人組と3人組のアーティストの楽曲を通し、真里がいた世界の存在を強調していたのだ。
8、9話と進むにつれ、エンディングテーマは物語を強く印象づけていく。第8話のウルフルズ「笑えれば」は来世で人間になるチャンスを得ながら、友人を助けるために人生5周目に突入する決意のテーマだった。第9話のKiroroの「Best Friend」は、何度人生をやり直しても友情は変わらないと思えた一場面を優しく彩っていた。あくまでコメディドラマであり笑えるシーンもたくさんあるのだが、その楽しさがむしろこれらの曲が流れるシーンの切なさを際立たせている。
『ブラッシュアップライフ』は人生をやり直し続けることで次第にその責任を背負っていくスケールの大きな物語だが、何気なく聴いてきたJ-POPが気持ちを昂らせていくのは我々の生活でも同じだ。人生の重要な決断をした時に背中を押してくれた曲や忘れたくない1日の帰り道にふと聴いた曲と同じように、これらのエンディングテーマは響き渡る。このドラマを我々の生活にとって身近な物語に感じさせてくれる見事な演出効果と言えるだろう。
『ブラッシュアップライフ』を彩る平成J-POPたちは“埋めたつもりのないタイムカプセル”のようなものだと思う。劇中で不意に掘り起こされ、気付かぬうちにノスタルジーに触れ、戻らない時間に想いを馳せてしまう。しかしそのノスタルジーを“人生をやり直す”物語の中に組み込むことで、過去を追体験しながら未来を変えようとするポジティブなエネルギーが沸き起こってくる。ただ単に懐かしむだけでなく、今を全力で生きることを支えるノスタルジーとして、平成J-POPを捉え直すことができるのだ。
『ブラッシュアップライフ』は3月12日、いよいよ最終回を迎える。時に笑い、時に感動し、時に切なく胸を打った素晴らしい劇中曲たちを味わえるのもこれでラストだ。どんな曲がこの物語を締めくくるのか、心して見届けたいと思う。
■放送情報
日曜ドラマ『ブラッシュアップライフ』
日本テレビ系にて、毎週日曜22:30〜放送
出演:安藤サクラ、夏帆、木南晴夏、染谷将太、志田未来、松坂桃李、黒木華、臼田あさ美、三浦透子、山田真歩、鈴木浩介、市川由衣、野呂佳代、田中直樹、水川あさみ、バカリズム
脚本:バカリズム
演出:水野格、狩山俊輔
プロデューサー:小田玲奈、榊原真由子、柴田裕基(AX-ON)、鈴木香織(AX-ON)
チーフプロデューサー:三上絵里子
企画協力:マセキ芸能社
制作協力:AX-ON
製作著作:日本テレビ
©︎日本テレビ
公式サイト:https://www.ntv.co.jp/brushup-life/
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