『リエゾン』最終回で強調される“信じること”の重要性 加藤柚凪の繊細な演技に涙

『リエゾン』加藤柚凪の繊細な演技に涙

 山崎育三郎主演のドラマ『リエゾン-こどものこころ診療所-』(テレビ朝日系)がついに最終回を迎える。郊外にある児童精神科さやま・こどもクリニックを舞台に、自らも発達障害=凸凹を持つ院長・佐山卓(山崎育三郎)と研修医・遠野志保(松本穂香)のコンビが、さまざまな生きづらさを抱えた子どもたちとその親にまっすぐ向き合ってきた本作。

 第7話では、3カ月前に母親を交通事故で無くしたASD=自閉スペクトラム症の少女・丸山優実(加藤柚凪)のグリーフケアに努める佐山に、父親が経営する佐山記念総合病院に新設予定の児童精神科で医長をやらないかという誘いが。自分の居場所でもあるクリニックがなくなってしまうかもしれない。志保がそんな不安に駆られる中、優実が家からいなくなってしまったと、父・浩之(三浦貴大)から連絡が入る。果たして、それぞれが辿り着く結末は。本稿では最終回を事前視聴した上でその見どころを紹介する。核心的なネタバレは避けるが、内容をあまり入れたくない方は注意してほしい。

 多くの人が生きづらさを抱える現代で、自分を信じてくれる人がいること、信じたい、信じられると思える人がいること。それがいかに重要なことかをこの物語は教えてくれた。そして、最終回はこの「信じる」ということを様々な角度から強調した内容だったように思う。

 まずは、「子どもの力を信じる」ということ。さやま・こどもクリニックには発達障害や摂食障害などによって、いろんな生活上の困難を抱える子どもたちが来院する。だが、多くの場合、困っているのは子ども本人ではなく親の方。子育てする中で、「どうして他の子どもが普通にできることをうちの子どもはできないのか」「うちの子どもはもしかしたら発達障害かもしれない」「そうだったとしたら、将来どうやって生きていけばいいのか」という疑問や悩みが生まれ、その解答を求めてクリニックにやってくる。子どもより何十年も長く生きてきた親たちは知っているのだ。いかに現代社会で“普通”が求められるかを。

 普通にその場に合った振る舞いができ、普通に人と付き合えて、普通に勉強ができる。そうじゃなければ生きづらい世の中に我が子を放り出すことが不安で不安でたまらない。そんな親たちに佐山が提示するのは、それぞれの凸凹に合った生き方だ。

 例えば、誰彼構わず話しかけては、一方的に話し続けてしまう傾向があるASDの女の子には、言語聴覚士・堀凛(志田未来)による療育を提供。ボールを使った会話遊びで、ちゃんと相手の話も聞きながら自分の話をすることを教えた。また、SLD=限局性学習症を持つ男の子の親には、タブレットを活用した苦手な読み書きの練習を提案している。たしかに他の子どもたちに比べて、極端に苦手なことがあったり、その苦手を克服するのに長い時間を要するかもしれない。だけど、その子に合った方法を見つけてあげれば、ひとつずつできることは増えていく。親たちはその事実に救われてきた。

 本作における最後の患者である優実の父・浩之は、母親が亡くなっても悲しむ様子が見られない娘に対してやるせない気持ちを抱えている。だけど、佐山が言うように大切な人を亡くした時の反応やその事実に向き合うペースも人によって様々。優実は子どもであることに加え、ASDを抱えていることから、まだ上手く死というものを理解できていないだけだ。一方、浩之も母親の死というものを優実が上手く受け止められるとは思っておらず、正面から伝えることができていない。しかし、そのことで優実がさらに混乱しているという事実に気がついた時、浩之は子どもの力を信じ、真実を打ち明ける。本作ではたくさんの子役たちが名演を披露してきたが、この場面で披露する加藤柚凪のわずか7歳とは思えない繊細な演技はきっと涙なしに観ることができないだろう。

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