『リエゾン』最終回で強調される“信じること”の重要性 加藤柚凪の繊細な演技に涙

『リエゾン』加藤柚凪の繊細な演技に涙

 またこの物語でもう一つ大事なこととして描かれてきたのが、自分ができないことを誰かに「信じて託す」ということ。

 本作は学校にも行かずにうつ病を抱える父親と2人で暮らしていたり、脳梗塞で右半身に麻痺が残ってしまった母親の面倒をほぼ1人で見ている、いわゆる“ヤングケアラー”と呼ばれる子どもたちの現状を映し出した。そういう子どもたちは、「自分が家族を守らなければ」「自分さえ我慢すれば」という責任感ゆえにどんどん追い詰められていく。

 だけど、当たり前だが、人一人にできることは限られている。ましてや、学校の勉強をしたり友達と遊んだりしながら家族の面倒を見るなんて無理があるに決まっているのだ。だから、大人たちはその役割を子どもたちの手から離し、別の支援者に託してあげる必要がある。また自分は家族を見放したという罪悪感を取り除いてあげることも大事だろう。ヤングケアラーの子どもたちは、誰かに家族の面倒を「信じて託す」ことができた時に初めて救われるのだ。

 一方、支援者側にも限界は存在することがこの物語では描かれている。80件もの案件を抱え、寝る時間も満足に取れない児童相談所の職員もいれば、多くの人が生きづらさを抱えている世の中ゆえに精神科を訪れる患者が後を絶たず、なかなか1人ひとりの診察に時間を割けない病院も存在する。そういう現状を打破するのが、リエゾン=連携だ。一人では持ち上げられないほど重い荷物も、みんなで持てば軽くなる。信じ合い、託し合える人が一人でも多く増えたらいい。最終回では、佐山が過去の出来事から確執を抱える父・高志(小日向文世)にあることを託す。そこには、リエゾンを何より大事にしてきた佐山らしさが詰まっていた。

 そして、最後に何より大事なのは「自分を信じる」ということ。この物語は発達障害の特性ゆえに研修でミスを連発し、一度は医者になることを諦めかけた志保がクリニックを訪れてきたことから始まった。彼女は佐山の元で研修を受け、子どもたちと向き合う中で自分にしかできないことを見つけ、苦手なことも少しずつ克服していく。そうやって少しずつ自信を取り戻していった志保だが、クリニックがなくなるかもしれないとなった途端、不安に襲われる。なぜなら、別の場所で佐山や向山(栗山千明)のように自分の存在を受け入れてくれる人がいるとは限らないから。また前みたいに失敗を繰り返して、周りに迷惑をかけてしまうかもしれない。そういう不安に打ち勝つために必要なのが、自分を信じる力だ。その力を佐山たちに授けてもらった志保が一歩踏み出す姿に、きっと見ている側も救われるはず。たくさん泣いた後に自分の心がいつもより軽くなっているのを実感する、そんな『リエゾン』らしい結末を見届けてほしい。

■放送情報
『リエゾン―こどものこころ診療所―』
テレビ朝日系にて、毎週金曜23:15〜0:15放送
出演:山崎育三郎、松本穂香、栗山千明、志田未来、戸塚純貴、是永瞳、風吹ジュン
原作:ヨンチャン(原作・漫画)・竹村優作(原作)『リエゾンーこどものこころ診療所-』(講談社『モーニング』連載)
脚本:吉田紀子
演出:Yuki Saito、小松隆志、竹園元(テレビ朝日)
チーフプロデューサー:五十嵐文郎(テレビ朝日)
プロデューサー:浜田壮瑛(テレビ朝日)、木曽貴美子(MMJ)、村山太郎(MMJ)
協力プロデューサー:中込卓也(テレビ朝日)
制作:テレビ朝日、MMJ
©︎テレビ朝日

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