『映画ドラえもん のび太の宇宙小戦争 2021』しずかちゃんの名言は今を生きる指針に

『映画ドラえもん』しずかちゃんが放った名言

 『映画ドラえもん のび太の宇宙小戦争 2021』の中でしずかちゃんは、「私だって怖いわよ。でも! このまま負けちゃうなんて、あんまりみじめじゃない!」と叫び、「やれるだけのことを、やるしかないんだわ!」と言って戦車に乗り込み、攻めてくるギルモア将軍の部隊を相手に戦うことを選ぶ。その勇気を讃える一方で、相手は無人兵器で撃破しても誰の命も奪っていないということは、頭に入れておく必要がある。

 自分の命をかけようとする勇気を出すことと、誰かの命を奪う覚悟をすることの間にある壁は、簡単には超えられない。そのことを今一度、冷静になって考える機会を与えてくれる作品でもあると言えそうだ。

 もうひとつ気になるところは、漫画の『大長編ドラえもん のび太の宇宙小戦争』や、1985年の映画版でしずかちゃんは、「でも……このまま独裁者に負けちゃうなんて、あんまりみじめじゃない!!」と言っている。これが『映画ドラえもん のび太の小宇宙戦争2021』では、独裁者を名指ししての決意にはなっていない。

 「独裁者」という言葉が子供向けの映画では難しいから避けたのだろうか。それとも、明確に独裁者という存在を設定すれば、対象となる独裁者を打倒することで晴らされた先に、やられたからやりかえすという連鎖を生み出しかねないため、普遍的な悪意を相手に戦うという意味合いにしようと落としたのか。気になるところだ。

 いずれにしても、「やれるだけのことを、やるしかないんだわ!」という言葉だけは、強く刻んでこれからの振る舞いや考え方の糧にしたくなる。そして、のび太やスネ夫、ジャイアンたちが特撮映画作りに取り組んでいる楽しそうな様子も、機材が発達して誰でも映像を制作できるようになった時代に、自分でもやってみようという気にさせてくれる。そんな思いを、子供に限らず大人にも抱かせてくれる映画だ。

■放送情報
『映画ドラえもん のび太の宇宙小戦争 2021』
テレビ朝日系にて、3月4日(土)18:56~20:54放送
原作:藤子・F・不二雄
監督:山口晋
脚本:佐藤大
キャスト:水田わさび、大原めぐみ、かかずゆみ、木村昴、関智一、香川照之、松岡茉優、朴ロ美、梶裕貴、諏訪部順一、内海崇(ミルクボーイ)、駒場孝(ミルクボーイ)
主題歌:Official髭男dism「Universe」
©藤子プロ・小学館・テレビ朝日・シンエイ・ADK 2021

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