『今夜すきやきだよ』が教えてくれた“共に生きる”方法 心を温めた料理と優しさ

『今夜すきやきだよ』が描いた共に生きる方法

 そして、「おいしいお家ご飯を通して紡ぐガールズムービー」最大の魅力は、なんといってもともこが作る美味しそうな料理の数々とそれにちなんだエピソードの数々である。それに加え、なにより素晴らしいのは、2人の「ガールズ」の話だけを描くのではなく、彼女たちが日常を送る中で関わるたくさんの人々との関係性によって、彼女たちの人生の物語が豊かに動いていく様子が丁寧に描かれていることだ。

 例えば、あいこがゆきにプロポーズされたことを素直に喜べない自分に戸惑うともこの思いを描いた第7話。ともこが「手塩にかけて」丁寧におにぎりを作るところから始まった回だったが、その後のあいこによる手作りおにぎりによって2人の間に生じかけたわだかまりが溶けた瞬間の感動は、まさに彼女たちの涙のしょっぱさと思いやりがふんわりと形を為したおにぎりそのもののようだった。そして「あいこの巣立ち」の後、ともこは憧れの絵本作家・内山田(宮崎美子)からもらったお菓子を大切そうに食べる。きっと、内山田の「寂しい気持ちと応援する気持ちは一緒に抱えられる」という言葉をお守り代わりに胸に抱いて。そのおにぎりとチョコレートの味は、観ているこちら側の心までじんわりと温めてくれた。

【予告】ドラマ24 今夜すきやきだよ 第7話

 ここにはたくさんの居心地のいい場所がある。ここなら「共生」できる、この世界だったら「生き抜ける気がする」と感じさせる優しさがある。例えばあいことともこの軽妙なやり取り。ともことしんた(三河悠冴)の言葉のキャッチボール。「男らしさ」を巡る、対照的な思いを語り合ったゆきとしんたの対話。会社におけるあいこと五十嵐(河井青葉)との理想的な上司と部下の関係。作家・ともこと編集者・山木(紺野ぶるま)の信頼関係。また、常に誰かと顔を突きあわせているわけではなく、あいこにとっての洗面所や風呂場、ともこにとっての台所、執筆部屋など、それぞれが悩み、自分の思いを整理するためのパーソナルスペースもしっかり描いていて、それもまた風通しがいい。

 彼ら彼女たちの、既存の価値観や、一時の感情のうねりに簡単に押し流されず、ちょっとした違和感にその都度立ち止まり、自分の思いを大切にしながら、なおかつ相手の思いや生き方もちゃんと尊重して関係性を築いていこうと模索する生き方の素晴らしさは、未来に確かな希望を感じさせてくれる。そして、思わず自分の世界に閉じこもりがちな臆病な誰かが、今度こそ誰かとちゃんと関わろうと、勇気を出して未知の大海原へ、足を一歩踏み出そうとする時、心の中に根付いた本作の登場人物たちがそっと寄り添ってくれるに違いないと思うのである。

■放送情報
ドラマ24『今夜すきやきだよ』
テレビ東京系にて、毎週金曜0:12~放送
出演:蓮佛美沙子、トリンドル玲奈、鈴木仁、三河悠冴、紺野ぶるま、河井青葉、宮崎美子ほか
原作:谷口菜津子『今夜すきやきだよ』(新潮社バンチコミックス刊)
監督:太田良、山中瑶子
脚本:山西竜矢
音楽プロデューサー:福島節
音楽:澤田かおり
チーフプロデューサー:祖父江里奈(テレビ東京)
プロデューサー:本間かなみ(テレビ東京)、高橋優子(ザ・ワークス)
制作:テレビ東京、ザ・ワークス
©︎谷口菜津子・新潮社/「今夜すきやきだよ」製作委員会
公式サイト:https://www.tv-tokyo.co.jp/konyasukiyakidayo/
公式Twitter:@txkonyasukiyaki
公式Instagram:@txkonyasukiyaki

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