菅生新樹が見せる狂気の演技 『凋落ゲーム』が描く、SNS社会に生きる教訓
フジテレビ系にて火曜深夜に放送中の『凋落ゲーム』が最終回を迎える。SNSで人気を集めるインフルエンサーであり若手起業家の主人公が、何者かに脅迫されゲームに巻き込まれていくというスリルのある作品だ。
主演を務める菅生新樹は、SNSへの投稿に力を入れるファッションサブスクリプションサービス会社の社長・守口奏多を演じている。起業家として軌道に乗っている守口に、彼の絶対に知られたくない姿を捉えた動画のダイレクトメッセージが届いたことからこの物語はスタートした。次々と送られてくる指示と、ホワイトノイズがかかるように急に移り変わる画面の演出が観る者の恐怖感を倍増させる。SNSのダイレクトメッセージというところも現代らしく、SNSをやっている誰もが想像できる手段であるからこそ、妙に現実味を帯びている。
今回迎える最終回の第4話は、守口が元同僚の寺田(森永悠希)の名前を呼ぶシーンから始まる。『スタンドUPスタート』(フジテレビ系)で野村修平が演じる東城充や、『Get Ready!』(TBS系)で池松壮亮が演じる投資家の渋谷などが登場していたように、今期ドラマでは企業の若い代表たちが取り上げられているが、本作も彼らのようにスタートアップ企業で切磋琢磨してきた仲間たちとの亀裂も描いている。物語が進むにつれて少し横暴になってきたり、社員をSNSの投票で辞職に追い込んだりと、自分のためならどんな行動も厭わない守田は、共に会社を立ち上げてきた寺田と仲違いをしてしまった過去がある。しかし、同じく一緒にやってきた王生(水谷果穂)はずっと彼を信じ続ける。なんだかんだ温かい部下にも囲まれており、守口のやってきたことは非道でもあるが、いかに幸せな環境にいるか、この件を通して感じてほしい気持ちになる。
さらに本作は、菅生の表情がアップで映し出され、それこそが不気味な恐怖へと視聴者を陥れる。守口はだんだんと追い詰められていき、人間としての見栄が綻びを見せていくのだ。菅生といえば、2022年夏に放送されたドラマ『初恋の悪魔』(日本テレビ系)でも、舞台となる警察署の署長・雪松(伊藤英明)の息子であり、大きな事件の犯人・弓弦として心の芯からぞっとさせるような演技を見せ、俳優として鮮烈な一歩を踏み出したことが記憶に新しい。本作でも、焦る表情やパニックで傲慢になっていく様子など、人間らしい細かな顔の動きや息づかいまで表現されており、全力で恐怖に立ち向かっているように感じられる。第1話のオープニングの表情と第4話終盤の表情を見比べてみると一目瞭然。何度も振り回されて、精神的にも肉体的にも疲れ果てている様子を演じきった。
自分の都合と体裁のために周りを振り回した挙句、脅されることでさらに人望を失っていく、一つの過ちで負のループに陥ってしまった守口。この斬新なストーリーを通して、現代のSNS社会における誹謗中傷や見えない相手に対する不安感など、若者の声を代弁してくれている。そして若くして経営者になったり、独立したりする人たちが多い世の中で、生き抜くための術を教えてくれているようにも思える作品だ。
■放送情報
火曜ACTION!『凋落ゲーム』(全4回)
フジテレビにて、毎週火曜24:35~25:05放送(※関東ローカル)
TVerおよびFODで全話無料見逃し配信中
出演:菅生新樹、水谷果穂、内藤秀一郎、那須ほほみ、丸山智己、森永悠希ほか
脚本:北浦勝大
演出:水戸祐介
プロデュース:大野公紀
©︎フジテレビ
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