『6秒間の軌跡』橋爪功の演じ分けで成立していた“2人”のオヤジ 切なすぎる星太郎の過去

『6秒間の軌跡』橋爪功の巧みな演じ分け

 一方、本物の幽霊の航も密かに星太郎を見守っていた。時折、星太郎の前に現れては消える少年(塚尾桜雅)。いつも何かに気づいてほしそうに星太郎を見つめていた彼こそが、幽霊の航。だから、星太郎だけじゃなくひかりにも認識できる。

 イマジナリーオヤジと幽霊オヤジ。その両方に囲まれ、ようやく星太郎はこれまで幽霊だと思っていた航との日々は自分の妄想だったことに気づいた。橋爪功の巧みな演じ分けのおかげで、よく見比べてみると両者はたしかに違う。イマジナリーオヤジは幽霊オヤジに比べて、やっぱりどこか“友達”っぽい。本音を言い合えて、バカみたいに一緒にはしゃげて、時に心の傷に寄り添ってくれる親友みたいな理想の父親だ。

 両親が離婚し、わずか9歳で父親と母親のどちらについていくかという選択を迫られた星太郎は母親についていきたかったが、周囲の大人に無神経な言葉をかけられ、航の元に残らざるを得なかった。本当は恋しい母親の話題すら航に気を遣って会話に出せない日々は寂しかっただろう。それでも、大人になって振り返れば、そんな日々も悪くはなかったと思えるようになった矢先に航が帰らぬ人となった。

 壊れそうな自分の心を守るため、星太郎がイマジナリーオヤジを作り出したという真実は切ない。だけど、イマジナリーオヤジも、イマジナリーオヤジと会話する星太郎を黙って見守ってきたひかりの存在も確かに必要だった。彼らがいなければ、星太郎は生き続けることさえできなかったかもしれない。それほどまでに幼少期より拭えぬ寂しさを抱える星太郎だが、かたや航は家を出て行った母親と愛人関係を結んでいたという。

 あまりにも子供の頃の星太郎が報われなさすぎる真実を連れ、本作は次週から最終章に突入する。どうか星太郎が無邪気に笑える日が来ることを願わずにはいられない。

■放送情報
土曜ナイトドラマ『6秒間の軌跡~花火師・望月星太郎の憂鬱』
テレビ朝日系にて、毎週土曜23:30〜0:00放送
出演:高橋一生、橋爪功、本田翼
脚本:橋部敦子
監督:藤田明二(テレビ朝日)、竹園元(テレビ朝日)、松尾崇(KADOKAWA)
ゼネラルプロデューサー:内山聖子(テレビ朝日)
プロデューサー:中込卓也(テレビ朝日)、山形亮介(KADOKAWA)、新井宏美(KADOKAWA)
制作著作:テレビ朝日
制作協力:KADOKAWA
©テレビ朝日
公式サイト:https://www.tv-asahi.co.jp/6byoukannokiseki/
公式Twitter:@6secEx

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「コラム」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる