『6秒間の軌跡』航は星太郎が作り出した架空の存在? 高橋一生が始めた“母親探し”
夜空に咲く花火を眺めていると、なぜだか無性に寂しくなる。その一瞬の美しさが楽しかった夏の終わりを告げるからだろうか。
『6秒間の軌跡~花火師・望月星太郎の憂鬱』(テレビ朝日系)第6話における主人公・星太郎(高橋一生)の姿も同じように、観る人を感傷的なムードに浸らせた。
航(橋爪功)が生前読んでいた新聞を解約せず、部屋に溜め込んでいた星太郎が航の遺品整理を始める。それだけでなんかもう、切ない。今も二人は顔を合わせ、楽しげな会話を繰り広げているが、皮肉なことに星太郎は航が“幽霊”になって自分の前に現れてからようやくその死と向き合えるようになったのだ。
他にも今回は星太郎の成長を感じる点が多々あった。例えば、幼なじみの勇人(小久保寿人)から依頼された苦手な恩師の定年祝いの花火を、私情を挟まずに作り上げたこと。しかも、打ち上げ後のクラス会にも少しだけ顔を出すつもりでいた星太郎。人付き合いが苦手な彼にとって、それがどれほど大きな決断だったか。
しかし、クラス会当日、打ち上げ花火は大成功に終わったが、星太郎の様子がどこかおかしい。クラス会にも結局参加せず、そそくさと家に帰ってしまった。実は4年前に別れた恋人の由紀子(安藤聖)がクラス会に出席しており、顔を合わせるのが気まずかったようだ。
星太郎の方は、由紀子が自分について何か言っていなかったかと気になったり、勇人の「若くてかわいい弟子がいる」という説明で自分とひかり(本田翼)の関係を誤解されたんじゃないかと心配したり、まだまだ未練たらたら。一方、由紀子は星太郎と別れてからすぐに結婚し、現在妊娠中だという。
星太郎の元から女性が去っていったことは過去に二度ある。一度目は母親。そして、二度目は由紀子だ。4年前に突然フラれ、星太郎も理由は分からずじまいだった。そんな中、由紀子が航の仏壇に手を合わせるために自宅を訪れてきたことで、ようやく星太郎はフラれた理由を理解する。「いつか結婚するだろう」と思いながらもその気持ちを相手に伝えず、話を先送りにし続けてきたという星太郎。きっとそこには、航をおいて自分だけが幸せになってもいいのだろうかという星太郎なりの思いもあったのだろう。だが、結果的には由紀子の気持ちを蔑ろにし、フラれてしまった。
多かれ少なかれ、人は誰しもそういうものだ。いつかいつかと言っている間に時間が経っていて、気がついたら手遅れになっている。考えるより先に行動派の航ですら、「そのうち捨てよう」と思いながら溜め込んだガラクタをついには整理せぬまま幽霊になってしまったように。