『6秒間の軌跡』高橋一生×橋爪功の楽しく切ない会話劇 “タイトル回収”回のはかなさ

『6秒間の軌跡』切ない“タイトル回収”

 4号玉の花火が打ち上がってから開き終えるまでの時間、約6秒。その一瞬のきらめきに私たちはどうしようもなく心惹かれる。

 花火大会の始まりは、享保18(1733)年。当時、江戸は大飢饉とコレラの流行に見舞われ、多くの死者を出した。そこで時の将軍・徳川吉宗が犠牲者の慰霊と悪疫退散のために催した水神祭において、余興として花火を上げたのがルーツになっているという。花火大会がお盆の時期に合わせて行われるのも、花火が元々亡くなった方の魂を鎮めるためのものであったためだ。

 夜空にパッと咲いて一瞬で消えゆく花火に、人は無意識に命のはかなさを重ね合わせるのかもしれない。“タイトル回収”回となった『6秒間の軌跡~花火師・望月星太郎の憂鬱』(テレビ朝日系)第4話は、そんなことを思わせた。

 星太郎(高橋一生)と幽霊になった父・航(橋爪功)、そして花火師見習いのひかり(本田翼)。最初はどうなることやらと思われた奇妙な3人暮らしもすっかり板についてきた。星太郎は他人との生活に未だ慣れず、シミがついた座布団のカバーを変えるべきか否かで迷っては航にからかわれ、それに対する星太郎のリアクションでひかりが姿形の見えない航の存在を感じるのが日常の風景となりつつある。

 そんな3人の会話だけでほぼ構成されていると言っても過言ではない本作だが、一向に飽きが来ない。特に“望月家のオールナイトニッポン”とでも名付けたくなるような、ゆるさの中にシュールな笑いが満載の星太郎と航のやりとりは中毒性がある。だが、そこには思いもよらない父と息子のヒストリーが隠されていた。

 それが明らかになったのは、ホームページから初めて入った個人向け花火の依頼をこなした日の夜。その依頼人である片山(高井佳佑)はかなり癖が強く、一目惚れした神谷(牛尾茉由)という女性に花火の下で告白をしたいとのことだったが、二人は顔見知り程度であり、星太郎とひかりはいきなり招待状を送っても来てくれるはずがないと思っていた。しかし、片山は神谷を「運命の人」だと信じて疑わず、星太郎たちに理想のシチュエーションをほとばしる汗とともに熱く語る。

 ちなみに、片山を演じる高井佳佑はチャンネル登録者数100万人越えの人気YouTuber兼お笑いコンビ・ガーリィレコードのメンバー。以前、高橋一生も『しゃべくり007』(日本テレビ系)でファンだと明かしていた。星太郎は片山の個性の強さに引き気味だが、中の人は必死で笑いをこらえていたのかもしれない。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「コラム」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる