麻美のやり直しは『アバウト・タイム』をなぞる? 真の『ブラッシュアップライフ』を考察

本当の『ブラッシュアップライフ』を考える

「もしも生まれ変わったら何になりたい?」

 そんな誰もが一度は考えたことのある“生まれ変わり”をテーマにした、現在放送中のドラマ『ブラッシュアップライフ』(日本テレビ系)。アラサー女子のあるあるを詰めた軽快なテンポの会話劇のリアルさと、独特な世界観を生み出すバカリズムならではのコミカルな脚本が話題を呼んでいる。

 『ブラッシュアップライフ』の面白さはなんと言っても、徳を積むことを目的としたタイムリープ要素にある。1回目はオオアリクイ、2回目はサバ、3回目はムラサキウニと、都度変わる転生先のユニークさも毎回楽しい。

 過去のエンタメ作品を振り返っても、『バタフライ・エフェクト』のような大作映画から、最近では『Re:ゼロから始める異世界生活』『東京リベンジャーズ』といった人気アニメまで、“タイムリープ系”作品はひとつのジャンルとして確立されてきた。そんな数ある作品の中で、映画『アバウト・タイム〜愛おしい時間について〜』(以下『アバウト・タイム』)の存在を思い出した。

『アバウト・タイム』と『ブラッシュアップライフ』の共通点

 『アバウト・タイム』では、主人公ティム(ドーナル・グリーソン)がタイムトラベルができる能力を使い、恋人や家族との時間を未来を変えながら繰り返す。さらに“タイムリープ系”作品で定番の人命救助の展開も盛りこまれた、まさにやり直しの醍醐味が詰まっていると言える本作。着実に人生をブラッシュアップしていくティムだが、タイムリープにはリスクがつきものであることも次第に明らかになっていく。例えば、やり直しのタイミングによって生まれてくる子どもが別人になってしまうシーンにはタイムリープの負の側面を感じざるを得なかった。

 同様に『ブラッシュアップライフ』でも、より大きな徳を積むために勉強に打ち込む麻美(安藤サクラ)が、3回目の人生で親友の夏希(夏帆)と美穂(木南晴夏)に壁を感じるようになる描写がある。『アバウト・タイム』然り、そのタイミングでなければ生まれない出会いや少しの関係値のズレにより未来が変わってしまう恐ろしさは、頭で理解していてもヒヤッとさせられる。

 最終的に『アバウト・タイム』のティムは、愛する人の死を受け止め、何気ない普段の日々こそがかけがえのない時間だったと気づく。タイムリープの可能性と限界を同時に感じさせられる作品であり、徳を重ねても思うような結果が出ない麻美の今の状態に通じるものがある。

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