山田孝之は服部半蔵のイメージを覆す? 『どうする家康』で表現する内面のリアル

山田孝之は服部半蔵のイメージを覆す?

 大河ドラマ『どうする家康』(NHK総合)での好演が光っている山田孝之。“光っている”とはいえ、戦乱の世を舞台に展開する物語で彼が演じているのは“影の存在”。かの有名な服部半蔵である。登場してまだ間もないものの、山田はシリアスな演技に徹し、ユーモラスなドラマの展開に新たな色を取り入れた。この作品ならではの“服部半蔵像”を立ち上げているところなのだ。

 服部半蔵といえば、伊賀忍者の代名詞的存在。映画、ドラマ、小説、アニメ、ゲームなど、じつにさまざまな創作物に登場し、広く親しまれている人物だ(しかし、本格的に忍者として活動をしていたのは彼の父親らしい)。忍者とは日本固有の存在であり、ジャパニーズカルチャー「NINJA」として海外でも受け入れられている。藤子不二雄Aの代表作の一つである『忍者ハットリくん』の主人公・ハットリくんは半蔵の子孫という設定だが、これによって半蔵にもコミカルなイメージを持たれている方が多いのではないだろうか。しかし基本的に、半蔵はもとより忍者というのはクールでスタイリッシュな存在。もちろんその裏には“影の存在”としての人生や宿命、多くの大切な同胞たちの犠牲などがあるのは言うまでもない。

 山田の演じる服部半蔵は寡黙な男だ。終始うつむきがちで発する言葉は常にボソボソとしたもの。“クールでスタイリッシュ”なイメージよりも、辛気臭いネガティブなオーラを感じる。ともに登場したのが松山ケンイチ演じる胡散臭さ全開の本多正信だというのも、山田が立ち上げる服部半蔵像を際立たせている。自分のことを「武士」だと主張するが、求められているのは忍びの仕事。山田の歯切れの悪いセリフ回しには、半蔵の自信のなさがとてもリアルに表れている。思い描く自分の姿と周囲の人々が抱くイメージとが、乖離しているのだ。令和の世を生きる私たちにも「分かる」気がする。

 本作の公式ガイド『NHK大河ドラマ・ガイド どうする家康 前編』(NHK出版)にて山田は、「今回描かれる半蔵は争いごとが嫌いで、『忍びはやるな』という父親の遺言どおりに生きようとしています。(中略)ただ、忍びの仕事を上から命じられれば従うしかなく、従わなければ一族を食べさせることもできない。そしていざ任務となれば、父に憧れた記憶があるので、少なからず喜びもある。半蔵の過去に想像をめぐらすほど複雑な思いにかられます」と、『どうする家康』における半蔵のキャラクターを分析。たしかに半蔵のあの佇まいには、いまの時代を生きる私たちには想像もつかないバックグラウンドがあるのを感じさせる。先述しているように、“影の存在”としての宿命に彼自身が翻弄されているのが分かるのだ。

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