『100万回 言えばよかった』悠依と直木がすれ違う歯がゆさ 事件の背景が次々と明らかに
「仲直りはしません。こういうときいつも、お互いウヤムヤにしたまま、なんだかんだ一緒にいるし、またどうせケンカもします。私たちはそんなふうに生きていく。この先も。だから、仲直りはしません」
ケンカをすることも、そのあとの気まずい雰囲気も、そしてまたどちらからともなく話せるようになってホッとする瞬間も……すべては相手がいればこそ。たとえ、彼の肉体がこの世界からなくなったとしても、まだケンカができているという事実が悠依(井上真央)は嬉しかったのかもしれない。
金曜ドラマ『100万回 言えばよかった』(TBS系)第5話では、直木(佐藤健)が巻き込まれた事件が、悠依の古い記憶と繋がっていく様子が描かれた。直木が殺された場所は、里親・勝(春風亭昇太)の家だった。剪定バサミと時計の音をきっかけに押し寄せた激痛。それは直木の記憶から消えた殺害時の痛みに間違いなさそうだ。
死亡推定時刻は1月13日の午後5時から7時ごろ。死因は胸部中央および右背部脇腹を刺されたことによる失血性ショック死。凶器は見つかっていないものの、傷口の形状から農作業用の剪定バサミが使われたものだという。直木の血液に染まったと思われるカーペットは家の近くで焼却され、拭き取ったと思われる床からは血液反応が検出された。遺体を埋めることなくシートをかぶせただけで放置していたところから考えても、おそらくとっさの出来事だったのではないかと思われる。
しかし、そんな話を聞いてもいまだ直木の死がピンとこない。それは、彼が幽霊としてそこに存在しているのが私たちには見えているから。悠依には見えていないものの、それでも口笛という新たなコミュニケーション方法も習得した。呼びかけるとそこにいるのがわかる。YESかNOか、意思疎通ができる。手を繋ぐぬくもりも、同じものを食べて喜ぶこともできないかもしれないけれど、今この瞬間を共に過ごしているのだと実感できれば一緒に生きていける、そう思えたのだろう。
だからこそ、直木の出棺には向き合うことができなかった。だって、まだ“生きている”から。たしかに体は死んでしまったかもしれないけれど、魂がそばにいるから。心が、体が、見送ることを全力で拒絶する。やっぱり直木と一緒に生きていきたいんだ、と。
ところが、「絶対諦めない」と覚悟を決める悠依に対して、直木は「悠依には新しい人生を生きてほしい。俺が成仏する方法、知ってる人いませんか?」と先輩幽霊のマーさん(板倉俊之)に相談する。お互いを大切に思うからこそすれ違う思いが胸を締め付ける。