『舞いあがれ!』悠人の思いは浩太にも届くはず “告白”を通して変化を迎えた3組の親子

『舞いあがれ!』告白を通して描く親子の和解

 岩倉家にとっても、“告白”が親子の関係に大きな影響を与えた。子供の頃から成績優秀だった悠人は、気がつけば一切実家に寄りつかない大人になっていた。何かあっても本音は言えない。父・浩太(高橋克典)と喧嘩別れをしてしまったこともずっと後悔しているけど、仏壇に手を合わせに行けない。一方でずっと一緒に暮らしながら親子として精神的に支え合ってきた舞(福原遥)とめぐみ(永作博美)は、IWAKURA編を経て社長と従業員という新たな関係性を築いていた。時には社長としてたしなめ、時には従業員として支える。IWAKURAの危機と再興を乗り越えたことで精神的にグッと成長した両者が、こんなふうに親子以外の形で絆を深める描写はとても興味深い。しかし、舞とめぐみのタッグが強まれば強まるほど悠人のアウトサイダー感が増したことも確かだ。

 悠人も会社をどうにかしたい、めぐみを助けたいと彼なりに考えていることがわかった。IWAKURAを買うことで窮地から救った行為は、父との最後のやりとりに対する後悔や罪悪感の先にあった彼なりの贖罪でもある。それでも彼は頑なに自分の本音を言わずにいた。そこには、思い返せば子供の頃から舞の方が病弱で、自分の意思を隠して伝えない子だったから両親の注意も彼女ばかりに向かっていたことが関係しているのではないだろうか。“俺なら大丈夫だから”というふうに、両親から自ら距離をとったのが悠人である。この親子は物理的にも心理的にも遠いところにいたが、ついに第19週にしてインサイダー取引疑惑をきっかけに和解することができた。それもこれも、先週に和解をした望月親子のおかげでもある。そして浩太の“告白”がノートを通して悠人に届き、それを受けた悠人が涙ながら口にした“告白”は、天国にいる浩太にも届いたはず。

 第19週のタイトルでもある「告白」は、ここ数週にわたって描かれていた梅津家、望月家、岩倉家と貴司、久留美、舞、悠人の子供たちの関係性の変化を大きく捉える大事な“きっかけ”だった。その告白の先にあるものを、見守りたい。

■放送情報
NHK連続テレビ小説『舞いあがれ!』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00 〜11:15
出演:福原遥、横山裕、高橋克典、永作博美、赤楚衛二、山下美月、目黒蓮、長濱ねる、高杉真宙、山口智充、くわばたりえ、又吉直樹、吉谷彩子、鈴木浩介、高畑淳子ほか
作:桑原亮子、嶋田うれ葉、佃良太
音楽:富貴晴美
主題歌:back number 「アイラブユー」
制作統括:熊野律時、管原浩
プロデューサー:上杉忠嗣
演出:田中正、野田雄介、小谷高義、松木健祐ほか
主なロケ予定地:東大阪市、長崎県五島市、新上五島町ほか
写真提供=NHK

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