役者は監督業で俳優に何を求める? 土屋太鳳、野村萬斎らが作るショートフィルム

『アクターズ・ショート・フィルム』の面白さ

 作品自体がどこか俳優論・演技論に見えるというのは『アクターズ・ショート・フィルム』に共通する特徴だ。

『Prelude~プレリュード~』

 土屋太鳳が監督した『Prelude~プレリュード~』は、バレエの道を志したが挫折感を抱えている歩架(土屋太鳳)と、祖父の戦争経験が共振する物語となっている。監督自身が有村架純とともに主演を務めていることもあってか、自分自身にカメラを向けて内面を深く掘り下げた物語にも見える。親友の桃子(有村架純)との会話の中で、ダンスについて語る場面があるのだが、俳優であると同時にダンサーとしての顔を持つ彼女の素顔も透けて見えるという意味ではセルフドキュメンタリー的な緊張感が漂っている。「何者かになることで、自分をさらけ出す」という意味で、演技とダンスは深いところで繋がっているのだと、本作を観て強く感じた。

『いつまで』

 対して、一番エンタメ性が高く感じられたのが、中川大志が監督した『いつまで』だ。結婚式帰りの教師の洸(井之脇海)、サラリーマンの礼司(板垣瑞生)、画家の卵の泰正(林裕太)の3人が終電を逃して夜の田舎町で一晩過ごす物語は、宮藤官九郎脚本のドラマ『ゆとりですがなにか』(日本テレビ系)を彷彿とさせる大人の青春ドラマとなっている。3人のやりとりがとても楽しく、このまま連続ドラマにできそうだ。

『虎の洞窟』

 野村萬斎が監督した『虎の洞窟』は、『ハムレット』と『山月記』を元にした短編フィルム。社会に居場所を見いだせない青年(窪田正孝)の心象風景を描いた作品だが、古典を換骨奪胎した物語と、能楽師の野村ならではの舞台的な映像空間が印象に残る。実験作であると同時にクラシカルな作品だ。

 どの作品も監督のカラーが強く出ており、俳優出身の監督ならではの短編フィルムとなっているのが『アクターズ・ショート・フィルム』の面白さである。

■WOWOWオンデマンドについて
スマホやPCでも見られるWOWOWオンデマンドはBS視聴環境がなくても視聴可能。
さらに、無料トライアルも実施中
申し込み月内は料金なしで体験可能。

■放送・配信情報
『アクターズ・ショート・フィルム3』
WOWOWにて、2023年2月11日(祝・土)20時~WOWOWプライム・WOWOWオンデマンドで放送・配信
※2月18日(土)・19日(日)・23日(祝・木)に特別上映&監督登壇イベント開催
監督:高良健吾、玉木宏、土屋太鳳、中川大志、野村萬斎
出演:中島歩、染谷将太、林遣都、土屋太鳳、有村架純、井之脇海、板垣瑞生、林裕太、窪田正孝
公式サイト:https://www.wowow.co.jp/movie/asf/
公式Twitter:https://twitter.com/asf_wowow
公式Instagram:https://www.instagram.com/asf_wowow/
配信URL:https://wod.wowow.co.jp/program/181832

『アクターズ・ショート・フィルム2』
WOWOWオンデマンドで配信中
配信URL:https://wod.wowow.co.jp/program/174107

『アクターズ・ショート・フィルム』
WOWOWオンデマンドで配信中
配信URL:https://wod.wowow.co.jp/program/171328

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