『舞いあがれ!』松尾諭の“ダメ父”役にみる演技の凄み 自然な佇まいが生み出す親近感

『舞いあがれ!』松尾諭が生み出す親近感

 NHKの朝ドラはヒロインとそれを取り巻く人々の人生が描かれる。時代設定が現代であれば、幼少期、学生時代、社会人、結婚、そして次の世代へとつないでいく。

 『舞いあがれ!』(NHK総合)では、舞(福原遥)の友人・久留美(山下美月)が八神(中川大輔)からプロポーズを受けて結婚することに。だが、強敵が現れそうな予感……。ここで鍵を握るのが、彼女の父・佳晴(松尾諭)の動向だろう。彼はどのようにして2人を後押ししていくのだろうか。

 振り返ると、佳晴はこれまで久留美に迷惑をかけてばかりだった。まだ、彼女が看護専門学校に通っていたころ、仕事を転々としていた佳晴は警備員をしていた。しかし、捻挫をして退職することに。彼は、それを知った久留美に一方的に責められたことで「お前はあいつ(出て行った母親)と一緒に行ったらよかったんや」「結婚でも何でもしたらええがな」と暴言を吐いてしまう。

 

 まさに娘をガッカリさせるダメな父親。だが、その奥底には栄光のラガーマンだった時代から転落した彼の心の傷があった……。だからといって「仕事をしなくていい」「娘を傷つけていい」とはならないが。

 久留美に金をせびったり、何もせずに寝転がったりしている姿を見ていると「父親だろ!」と背中を叩きたくなるし、あの何をするにも「だって、しょうがないやんけ……」と言わんばかりの表情で娘と接するシーンを見ると「ダメだな〜!」と感情的になってしまう。ただ、彼が前向きに仕事をしているときや、久留美の誕生日を覚えていたときは心が和んだ。苛立つことも多いけど、久留美の幸せを願う視聴者としては、なんだかんだ気になるキャラクターではある。

 佳晴演じる松尾諭は、そうやって“娘に迷惑かけっぱなしの父親”を見事に演じ、存在感を示してきた。

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