『Get Ready!』松下奈緒と美村里江が生と死をめぐって対峙 『MIU404』にも通じるテーマ

『Get Ready!』美村里江迫真の演技

 才能か、命か。日曜劇場『Get Ready!』(TBS系)第4話は、生き延びる価値をめぐって究極の選択を突きつけた。

 法外な治療費を払えば、どんな困難な手術も成功させる。もし仮面ドクターズが実在していたら、多くの人が手術を希望するのではないか。では、それが代償をともなうとしたら? 事態の様相は一変し、新たな難問に直面することになる。

 第4話で仮面ドクターズが治療するのは古賀洋子(美村里江)。天才彫刻家として活躍する洋子は、小脳に摘出不可能な腫瘍を抱えていた。ジョーカー(藤原竜也)と交渉し、6億円で摘出手術を行うことになった洋子だったが、エース(妻夫木聡)は洋子が後天性サヴァン症候群であると見抜く。手術をすれば洋子の命は助かるが、彫刻家としての才能は失われる。恋人でキュレーターの倉木(青柳翔)は手術を望むが、洋子は倉木が愛しているのは彫刻家の自分であると思い悩む。

 すべてを失っても生きる価値が自分にはあるのか。「生き延びる価値」を再定義する『Get Ready!』で、何のために生きるかという問いは、何によってこの世界とつながっているかという問いと密接に関連している。生き物としてのありようを考えるとき、どんな人もただ単に生きているわけではなく、多くの人とかかわりながら、たくさんのものを背負っていることに気付かされる。才能もその一つだ。地位や名誉、財産、それらのものと才能が違うのは、よりアイデンティティに根差したその人そのものといえるからだろう。才能には、長所や欠点を含むその人らしさが表れる。才能を失った自分は、はたして自分と呼べるのかという問いが第4話の根底にあった。

 葛藤する洋子のもとに現れたのは、仮面ドクターズのクイーン(松下奈緒)。「才能は生きるために利用するもの」と説得するジョーカーと対照的に、クイーンは「自分のことは自分で決めるしかない」と洋子を突き放す。ジュエリーデザイナーだったクイーンは、開発した人工ダイヤの精巧さが災いして、裏社会の人間に命を狙われるように。そんな時、エースと出会った。過去を捨て自分のすべてだと思ったものを手放した現在を、クイーンは「悪くない」と振り返る。なぜなら選んだのは自分であり、仮にこの先後悔するとしても納得はできるからだ。

 洋子が下した決断については本編をご覧いただくとして、一つ言えるのは、洋子は自分にしかできない決断をしたということだ。自身も周囲の人間も裏切らず命をまっとうするのは誰にでもできることではなく、難しい選択ではあったが、ギリギリの瀬戸際で彼女は自分自身から目を逸らさず、自らの人生の操縦桿を手放さなかった。

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