『大奥』傷ついた堀田真由を福士蒼汰が包み込む ドラマオリジナルの和歌が示す恋の始まり

『大奥』傷ついた家光を有功が包み込む

 家康の時代から続く泰平の世を維持するという名目で、春日局がやってきたことは大奥内部に戦乱をもたらした。悲しみや怒りが、人から人へと伝染していく。その連鎖を断ち切ろうと、自分の鬱憤を晴らすために誰かを傷つけることを厭わない家光に「甘えてるんやない」と厳しい言葉を投げかける有功。しかし、家光は有功も想像できないほどの壮絶な人生を歩んできた。母親を殺され、髪を切られ、男のなりをさせられ、彼女はあらゆる尊厳を全て奪われたといっても過言ではない。

 まともに向き合ったら狂ってしまいそうだから、家光は怒りや哄笑でその痛みをコーティングする。その今にも傷が剥き出しそうで見ていられないほどの痛々しさを全身で表現する堀田。事前インタビューで本人が「限りなく家光と近づけているのを感じた」と語っていたように、様々な色が混じり、何色とも判別がつかない複雑な家光の感情と一つに重なり合うその演技に心が大きく揺さぶられる(※)。だからこそ、そんな家光に有功が可憐な打掛を羽織らせ、「千恵」と本来の名で呼んだ時はこちらまで救われたような気分になった。有功を演じる福士の慈愛に満ちた瞳がまた涙を誘う。

<凍え雛 一羽身を寄せ 坊主雛 千の恵や 功有らんと願ふ>

 有功が千恵に送ったドラマオリジナルの和歌に描かれているように、どうか2人身を寄せ合うことで生まれる幸せが延々と続くことを願わずにはいられない。

参照

※ https://realsound.jp/movie/2023/01/post-1236070.html

■放送情報
ドラマ10『大奥』
NHK総合にて、毎週火曜22:00~22:45放送
出演:福士蒼汰、堀田真由、斉藤由貴、仲里依紗、山本耕史、竜雷太、中島裕翔、冨永愛、風間俊介、貫地谷しほり、片岡愛之助ほか
原作:よしながふみ『大奥』
脚本:森下佳子
制作統括:藤並英樹
主題歌:幾田りら
音楽:KOHTA YAMAMOTO
プロデューサー:舩田遼介、松田恭典
演出:大原拓、田島彰洋、川野秀昭
写真提供=NHK
©よしながふみ/白泉社

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