『赤いナースコール』佐藤勝利が恐怖の限界に挑む 過剰さがもたらす倒錯したスリル

『赤いナースコール』秋元康が贈る傑作

 ナースコールを押して誰も出なければその患者は死ぬ。入院先の病院で耳にした噂は、覚めることのない悪夢のはじまりだった。

 『赤いナースコール』(テレビ東京系)のBlu-ray&DVD-BOXが、1月11日に発売される。2022年7月期に放送されると、絶えず襲いくる恐怖と先の読めない展開で観る者を震撼させ、月曜の深夜を眠れぬ夜に変えた本作の見どころを紹介したい。

 「史上最恐ミステリー&ノンストップラブサスペンス」が本作のキャッチコピーだ。情報量が多すぎて目まいがするが、通して観た人なら、本作が、恐怖が切れ目なく続くホラーと、謎が謎を呼ぶミステリーに恋愛要素を加えたサスペンスであることに異論はないだろう。しかし、本作の異色さはそれだけではない。ジャンル分けすればたしかに上記のようになるが、そこからさらに逸脱するのが『赤いナースコール』である。どういうことかと言うと、恐怖やミステリー、サスペンス、恋愛要素の全てが通常のそれを上回っている。リミットを振り切っているのだ。臨界点を超えてやりすぎているのが『赤いナースコール』という作品である。

 本作がここまで過剰な作品になった原因は作り手の側にある。企画・原作・脚本を手がけるのは秋元康。言わずと知れたAKB48グループや坂道シリーズのプロデューサーで、日本を代表するクリエイターの氏についてここで語ると文字数が絶対的に不足するので割愛するが、2021年に劇場版が公開された『あなたの番です』(日本テレビ系)で考察ブームを引き起こした張本人である。月曜深夜の「ドラマプレミア23」枠は、このところ秋元原作の作品が続いているが、その中でも『赤いナースコール』はいろいろな意味で突出している。

 『赤いナースコール』と考察は切っても切り離せない。SNS全盛時代にバズを巻き起こす考察カルチャーだが、『赤いナースコール』は視聴者による犯人探しを前提に作られている。制作発表でのやり取りや役者たちの証言によると、仕掛人である秋元は、あろうことか主演の佐藤勝利(Sexy Zone)を含むキャストにも真犯人を知らせなかったというのだから驚きだ。連続ドラマで結末が決まらないままシナリオが加筆されることはままあることとはいえ、考察系ドラマでそれをすることは下手すると終盤でつじつまが合わなくなってストーリーが破綻するリスクすらある。それでもあえて引きの強い映像と大胆なミスリードで私たちを翻弄するのが『赤いナースコール』という作品なのである。

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