日曜劇場に秋元康流、考察ドラマの違いは? 『マイファミリー』のヒットから探る

日曜劇場と秋元康流、考察ドラマの違いは?

 6月12日に最終回を迎えた二宮和也主演の日曜劇場『マイファミリー』(TBS系)。ミステリー展開が好評だった今作は、娘が誘拐されたことから始まる家族の絆をテーマとした考察系ドラマだが、前クールに放送された秋元康企画・原案の日曜ドラマ『真犯人フラグ』(日本テレビ系)も家族が失踪するミステリーで、父親が疑われたり、メディアと世論を利用した犯罪劇など共通する点が多く何かと比較されることが多かった。だが、蓋を開けてみると、『マイファミリー』は秋元企画の考察ドラマとはまた違うタイプのドラマだったように思う。そこで、日曜劇場流の考察ドラマ、日テレ秋元康流の考察ドラマとして比較してみたい。

 『真犯人フラグ』と『マイファミリー』は似ているようで、根本的にドラマとしてのスタイルがまず違う。それは脚本の特徴でもあるが、放送枠の趣味嗜好というのも大きいだろう。『真犯人フラグ』は、最初に多くの人物(容疑者)を登場させ、話が進むにつれ真犯人が絞り込まれていくスタイル。これはまず、2019年に放送された田中圭主演ドラマ『あなたの番です』(日本テレビ系)の成功が大きく、以前から秋元企画のドラマはたくさんの登場人物が繰り広げる群像劇を得意としている。これはアイドルプロデュースにも通じるところで、キャラに個性を与え、それぞれが動き出し、物語の裏にあるドラマを形成し、特にミステリーではその過剰な個性がどれも怪しい容疑者として活かされる。なので、最初はとっ散らかって何が起きているのか視聴者は分からないが、それぞれの動機を一人一人掘っていき、そのパズルのピースを主人公が集め、様々な謎を解明していく面白さが特徴的だろう。

 主人公が謎解きをし、周りの人が協力するというスタイルも、視聴者が主人公と同じ目線になれるので考察が楽しめるRPG要素が強い作品とも言える。ただこれはドラマが2クールあり、1クール分人物紹介に使えるからこそできる技法だ。また、見せる怖さと見せない怖さも特徴的で、途中での犠牲者が多く、様々なトリックで惨殺される姿を見せたり、体の一部が主人公宅に送られてくるなど、スプラッター要素満載のショッキングな映像を見せてくる一方で、意味深な閉じられた部屋など、意図的に見せない演出でジレンマを誘う、挑発的な描写で視聴者を揺さぶる。

 ただ、これらは日テレ日曜22時30分の「日曜ドラマ」の特徴と言える。「日曜ドラマ」は、元々「映画ファンも楽しめるエンターテインメント」をテーマに立ち上げられたドラマ枠。菅田将暉主演『3年A組 ―今から皆さんは、人質です―』や竹内涼真主演『君と世界が終わる日に』など、最近の地上波ドラマにしては視覚的にも倫理的にも、リミッターを超えたバイオレンス要素が強く、挑戦した内容のものが多い。そうしたエンターテインメント性が要求される枠だからこそ、スプラッター要素の強いミステリーを作ることができたと言える。

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