『舞いあがれ!』横山裕、悠人の正論を絶妙に表現 舞の行動は“その場しのぎの親切”なのか

『舞いあがれ!』悠人の正論が突きつけるもの

 2023年、『舞いあがれ!』(NHK総合)が第64話から再スタートを切った。第14週の「父の背中」では、悠人(横山裕)が久しぶりに東大阪へ帰省する。悠人はリーマンショックの影響で経営危機に陥ったIWAKURAにやってきた。舞(福原遥)は「お兄ちゃん、来てくれたんやな」と笑顔で迎え入れる。悠人は長年工場で働いている笠巻(古舘寛治)や結城(葵揚)と言葉を交わしつつ、工場内を物色するように見て回ると、「腹減った。うめづ行ってくるわ」と父・浩太(高橋克典)と顔を合わせることなくその場を去っていった。

 悠人はその後、浩太とめぐみ(永作博美)、舞と家族団らんの時間を過ごす。悠人なりに父・浩太の体調や工場の将来を心配している様子で、悠人と浩太の「もういけんの?」「ビールも飲めると思うねけどな」という会話では普段の悠人らしいつんけんした口調だが、その声色には父の体調を気遣う優しさが滲み出る。

 浩太が「まあまあ、お前は飲め。工場に新しい仕事が来たお祝いや」と酒を勧める場面では、そんな浩太の姿を見て、一瞬ふっと柔らかい表情を浮かべた悠人。その一瞬には、上機嫌な父の姿に安心し、いつも口論になってしまう父と打ち解けたことへの嬉しさなどが感じられた。その後、悠人が工場を売ることを勧めたことで、浩太とはいつものように口論になってしまうのだが、「なあ、おやじ。借金増えてってんねやろ。傷が浅いうちに工場売んの考えた方がええんちゃう」と語りかける悠人の声は穏やかだ。その表情は決して父を軽蔑するようなものではなく、家族や工場を心配していることが伝わってくる。悠人は、家族とは価値観が異なるだけなのだ。けれど浩太には悠人の提案を受け入れることはできなかった。

 後日、舞は悠人をカフェに呼び出し、「一緒に考えてほしいねん。工場、立て直す方法」と協力を求める。舞は、浩太がこれまでどれほど頑張ってきたか、工場や工場で働く人をどれほど大事に思ってきたかを訴えかけるが、悠人の返答は厳しいものだった。

「お前、来年にはパイロットになって家出ていくんやろ。そのあと、工場がどうなんのか考えたことあんのか? お前がやってることはその場しのぎの親切やねん。どうせ手ぇ離すんやったらはなから助けん方がええ。無責任やぞ」

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