『舞いあがれ!』又野暁仁演じる朝陽が放つ個性の輝き 変わりもんを“優しさ”が包み込む

『舞いあがれ!』朝陽が放つ個性の輝き

 『舞いあがれ!』(NHK総合)第12週「翼を休める島」は、物語全体が折り返しを迎えようとする中でもう一度作品自体が持つテーマに立ち返る週だ。

 もう一つの故郷・五島に帰ってきた舞(福原遥)と貴司(赤楚衛二)。祥子(高畑淳子)の家で出会う朝陽(又野暁仁)は東京の学校で生きづらさを抱えた、本音を言えずにいる少年。舞も貴司も朝陽にかつての自分を重ねていた。

 2人が朝陽の心を開く糸口として見つけるのが、彼の好きな「星」だ。家の縁側に並べられた南天の実は、冬の星空を表していた。舞は、さくら(長濱ねる)の彼氏・むっちゃんが作った「星空クラブ」が、今でも島の小学生と中学生が放課後に集まって星の勉強をする集まりとして存在していることを知り、母・美知留(辻本みず希)へと勧める。星空クラブに興味を示した朝陽だったが、もう少しというところで癇癪を起こしてしまうのだった。

 そんな朝陽に率先して寄り添うのが貴司だ。朝陽の揺れ動く気持ちや状況を今一度ノートに書き出すことで、朝陽自身がその気持ちを客観的に見つめることができる。そこから朝陽がノートに自ら書いたのが「行けってうるさい」という本心。周りからの言葉の一つひとつが“重い荷物”として蓄積してしまっていたのだ。幼い日の舞のように。

 気持ちをノートに書き出すことは、貴司の言う“つらくなってしまう前に気持ちを吐き出す”作業である。

「きもちかいてみる」

「すこしモヤモヤがへる」

「みんなとあそべる」

「星空クラブに行きたい」

 美知留は朝陽が自ら書いたノートを見つけ、初めて息子の気持ちを知る。新しい一歩を踏み出した朝陽は星空クラブにも笑顔で出かけ、あれだけ拒んでいたかんころ餅にも「美味い!」と舌鼓を打つ。演じる又野暁仁のあまりにもナチュラル、というか素とも言える「美味い!」に共演者も思わず笑顔に。どこかひりついていた祥子の家は、朝陽の心が解放されたことで優しい空気へと変わっている。

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