『ウェンズデー』“のけ者”たちのヒーローに魅了されること間違いなし!

 もちろんティム・バートンはアメリカのティーンエイジャーをワッとさせて貴重な青春をめちゃくちゃにしてやろうと考えて本作を作ったわけではない。その一方で、本作がアメリカのティーンエイジャーをワッとさせる作品となってのは必然である。なぜなら、ウェンズデーは“のけ者”たちのヒーローだからだ。

 いじめっ子のいるプールに狂暴なピラニアを放ったウェンズデーは両親の母校であるネヴァーモア学園に転校することになる(エディット・ピアフの「Non, je ne regerette rien(水に流して)」と共に狂暴なピラニアがいじめっ子の金玉を食い破るシーンは最高にクールなオープニング・シークエンスのひとつだ)。このネヴァーモア学園というのがセイレーンや人狼、ゴルゴン族といった人間社会ののけ者たちが集う学園なのだ。その中で、ウェンズデーはのけ者たちの中でも特にのけ者の生徒と交流するようになる。ルームメイトのイーニッド(エマ・マイヤーズ)は人狼族でありながら未だに狼化できずにいる。養蜂部のユージーン(ムーサ・モスタファ)は気弱で友達もおらず、まさにのけ者の学園におけるスクールカーストの底辺だ。

 そしてウェンズデー自身も憮然とした奇行と目的のためには平然と人の心を踏みにじる無慈悲さで見事に孤立する。大抵の場合ウェンズデーに人の心はないが、のけ者のために理不尽に立ち向かうことがある。なにより最高にのけ者である自身の利害のために。それがすごくかっこよかったりする。ウェンズデーはのけ者である彼らを決して否定したりしない。そのため『ウェンズデー』という作品自体、陰気な10代というのけ者に対する肯定と応援を込めた作品になっている。結果陰気な10代がワッとなってしまうのも仕方のないことなのだ。一方でウェンズデー自身は「もしかしたら、目的のために人の心を踏みにじったりするのはよくないかもしれない」と内省したりする。のけ者を肯定してくれたからこそ、自分は彼女に言いたい。「そのままでいい。目的のために人の心を踏みにじるようなウェンズデーであってくれ」と。

 それから、本作を語る上で避けることができないのがウェンズデーとイーニッドの関係性だ。ウェンズデーのルームメイトであるイーニッドは陽気でカラフルなファッションを好み、人懐っこい性格をしている。そう、まさにウェンズデーと正反対なキャラクターだ。これはもう大変なことである。「ふたり」という関係性を描く上で「正反対」という属性があるのは、それはもう大変なことなのである。「ワ~ッ」と人懐っこく距離を詰めるイーニッドと、鬱陶しそうに顔をしかめるウェンズデー。このふたりのやり取りだけで無限に観られる。余談だが本国ではウェンズデーとイーニッドのロマンスを望む声があがっているそうだ。実際本作を観てみると、「そりゃそうなるよなあ」というくらい素敵なシーンがクライマックスにやってくる。気になった方は是非観てほしい。

■配信情報
Netflixシリーズ『ウェンズデー』
Netflixにて独占配信中
Courtesy of Netflix © 2022

関連記事