清原果耶、『城塚翡翠』は新たな代表作に “かわいらしさ”の可能性を広げた名演技
清原果耶が主演を務める『invert 城塚翡翠 倒叙集』(日本テレビ系)のキャッチコピーは「すべてが、反転。」である。
ひとつの事件を主軸に城塚翡翠(清原果耶)と香月史郎(瀬戸康史)が活躍した『霊媒探偵・城塚翡翠』とは打って変わって、犯人側の視点から物語が展開する倒叙ミステリーとして変貌を遂げた本作。この仕掛けには驚かされたが、『invert 城塚翡翠 倒叙集』にて、もうひとつ“反転”したことがある。
※本稿には『霊媒探偵・城塚翡翠』のネタバレを含みます
多くの人が犠牲となった「女性刺創連続殺人事件」を追っていた可憐で清楚な翡翠と、ミステリアスでクールなアシスタント・千和崎真(小芝風花)はどこへやら……本作にて、2人はとっても明るいコンビだったことが発覚したのだ。
千和崎が楽しみにしていた限定のプリンを4つも食べた翡翠は、彼女に「お先にいただいちゃました。テヘペロ コッツンコさんでーす」と煽る。一方、千和崎も負けてはいない。翡翠の印象について問われた際に「世界で一番信用できない女」「殺人鬼と恋愛ごっこをすることで、スリルと快感を得る変態ドS探偵」とバッサリ切り捨てた。
また、翡翠が透明な悪魔・香月と心の距離を詰めた必殺技も明らかに。翡翠は、本を読む彼に近づき「先生、一緒に読んでもいいですか? “こてんスヤ〜”」と香月の肩にもたれかかって寝たフリをしたというのだ。千和崎の前で、この作戦を振り返った翡翠は「だいたいこれでイチコロです」と言い放った。
このように、それぞれのパブリックイメージも反転した、というわけ。先に断っておくが、これは「重厚なミステリーが観たい」というクレームではない。むしろ大歓迎! 事件もいいけど、もっと2人の眼福シーンも眺めていたい!
主役・翡翠の根源にある“かわいらしさ”を引き出しているのは、小芝の受けの演技はもちろんのこと、清原自身の力であるのは間違いない。真剣な眼差しで事件に挑むときと、千和崎といるときの翡翠の“ギャップ”もいいし、凛とした性格で物静かな人物を演じていた翡翠も、じつはチャーミングな翡翠も最高。その時々によって、いろんな顔を見せる彼女が、とにかくかわいらしいのだ。
ある意味で神秘的な翡翠を見事に演じ切っている清原は、若干20歳ながら多くの作品に出演している。『俺の話は長い』(2019年/日本テレビ系)の秋葉春海、連続テレビ小説『おかえりモネ』(2021年/NHK総合)のヒロイン・永浦百音、『ファイトソング』(2021年/TBS系)の主役・木皿花枝、映画『3月のライオン』(2017年)の川本ひなた、映画『護られなかった者たちへ』(2021年)の円山幹子など、挙げればキリがない。
清原の演技は、見惚れてしまうビジュアルも相まって、人を惹きつける吸引力があるように感じる。明るい役は元気をもらえるし、心がえぐられる話は、彼女の役とともに涙を流してしまう。