松下洸平が積み重ねていく立体的な人物像 『アトムの童』隼人役で見せる実直さ

松下洸平が積み重ねていく立体的な人物像

 特に印象的なのが、那由他の前で見せる少年のような顔。どちらかといえば、直感型の那由他が生み出したアイデアを具現化していく際、隼人は頭の中で論理を組み立てながらも好奇心やワクワクが抑えきれないといった表情をいつも浮かべている。でも大人って案外そういうものかもしれない。どんなに年齢を重ねても旧友の前では当時の頃に戻ってしまう。眼鏡をかけているから、大人だから。そういう単純な役づくりではなく、松下はその人の過去から現在までのイメージをしっかりと膨らませた上で芝居に臨む。だから那由他の前で見せる顔と、那由他以外の人に見せる顔とではまた違う。社会人になってから出会った人たちには、たとえ相手が「アトム玩具」の仲間でどんなに打ち解けたとしても、“大人らしい”振る舞いを見せており、そんなとこからも隼人の実直さを感じるのだ。

 ゲーム作りへの情熱はそのままに、敵方とはいえ興津の会社でビジネスマンとしてのスキルも手に入れた隼人の存在は、那由他にとっても大きな力となる。松下は『最愛』(TBS系)や『やんごとなき一族』(フジテレビ系)でも主人公を支える役回りを演じてきたが、決して目立たない存在にはならない。主役を引き立てる抑えた演技でありながら、そこに言葉以上の感情が溢れ出ていて自然と気持ちがつられる。こうなってくると普通はその役目線の物語を観たくなるのだが、松下の芝居はスピンオフいらず。一つの作品内でしっかりと役の過去から現在までの軌跡を語り、平面的ではない立体的な人物として浮かび上がらせる。

 『アトムの童』 は前回の第6話から第二章に突入した。「アトム玩具」が興津に買収されてもなお、諦めることなく今度は共に立ち上がった那由他と隼人。ここから果たしてどんな逆転劇を見せてくれるのか。隼人という役にどんどん歴史を積み重ねていく松下洸平の演技からも目が離せない。

参考

※ ナビ番組「日曜劇場『アトムの童』徹底攻略スペシャル」(TBS系)でのインタビューにて

■放送情報
日曜劇場『アトムの童』
TBS系にて、毎週日曜21:00~21:54放送
出演:山﨑賢人、松下洸平、岸井ゆきの、岡部大(ハナコ)、馬場徹、栁俊太郎、六角慎司、玄理、飯沼愛、戸田菜穂、皆川猿時、塚地武雅(ドランクドラゴン)、でんでん、風間杜夫、オダギリジョー
ナレーション:神田伯山
脚本:神森万里江
演出:岡本伸吾、山室大輔、大内舞子、多胡由章
プロデュース:中井芳彦、益田千愛
音楽:大間々昂
製作著作:TBS
©︎TBS
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/atomnoko_tbs/

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