『すずめの戸締まり』原菜乃華は上白石萌音、森七菜に続くか “声”で評価される女優の系譜

原菜乃華ら声優として評価される女優の系譜

 新海誠監督の最新長編アニメーション映画『すずめの戸締まり』が公開中だ。公開初日の段階で20回以上も上映されている劇場もあるとのことで、コアな映画ファンだけでなくカップルやファミリー層からの注目度も高い。

近年の新海誠作品のヒロインは女優を起用

 本作の主人公・岩戸鈴芽役の声優に抜擢されたのは、ドラマ 『ナンバMG5』(フジテレビ系)、『真犯人フラグ』(日本テレビ系)などで着実に実力を見せてきた原菜乃華。本作のオーディションにあたっては、1700人を超える応募者から鈴芽役を手にしたことが話題を呼んでいる。

 鈴芽の高校生ならではのフレッシュで明るい「少女らしさ」と原の透明感のある声と演技がぴったりとハマり、声優として原を評価する声も多く上がっている。実際に本作を観た1人の観客として、泣き、笑い、恋をする……次々と変わっていく鈴芽の表情に呼応する繊細な表現に惹きつけられた。原自身がインタビューで鈴芽に対して「いい意味でも悪い意味でも、突っ走ってしまうところがある」(※1)と語っているように、松村北斗演じる宗像草太の落ち着いた声色とのコントラストの効いた、アクティブな鈴芽らしさ溢れる演技が2人をより確固たるバディとして印象付けていた。

 最近の大作アニメ映画では人気俳優や女優が声優に抜擢されることが多く、話題作りも兼ねた新しい活躍のステージとも言える。

 新海誠監督の過去作品において、女優の抜擢が成功した例の原点となったのは日本社会に一大ムーブメントを巻き起こした『君の名は。』で三葉役を演じた上白石萌音だろう。舞台やミュージカルで活躍する説得力のある演技力の高さによって「入れ替わり」によるキャラクターの切り替えの機微を丁寧に演じ切った。『君の名は。』で日本にその名を刻んだ上白石は、最近では「anan AWARD 2022」でアーティスト部門を受賞するなど女優としても歌手としても活躍の場を広げ続けている。

 続く新海誠作品の 『天気の子』で、ヒロイン・陽菜役を演じたのはドラマ『3年A組 ―今から皆さんは、人質です―』(日本テレビ系)や『この恋あたためますか』(TBS系)ほか、上白石同様に歌手としても人気を集める森七菜。ドラマとは異なる形の映像作品においても主人公・帆高役の醍醐虎汰朗と共に、2000人を超えるオーディションを勝ち抜いた実力を観客に見せつけた。『天気の子』では陽菜が持つ特別な力を使って祈りを捧げるシーンが複数にわたって描かれるが、一歩誤れば浮世離れし過ぎたちぐはぐな印象を観客に残しかねないこの場面も、森の重くなり過ぎない、それでいて神聖さを感じる「祈り」の表現が見事にマッチしていたように感じた。

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