『カーテンコール』カン・ハヌル演じる“偽の孫”にハラハラ 古典的な演出の中に光る新しさ

『カーテンコール』カン・ハヌルが偽の孫に

 カン・ハヌルが役の中で役を演じる、Amazon Prime Videoで配信中のドラマ『カーテンコール』。本作は、韓国と北朝鮮に分かれている分断国家の問題を、離散家族を中心に描いた作品だ。偽の孫を演じる主役のカン・ハヌルと祖母役のコ・ドゥシムの関係に涙腺を刺激されている視聴者も多い。

 北朝鮮出身のホテル「楽園」の社長であるチャ・グムスン(コ・ドゥシム)が病で余命3カ月となり、側近チョン・サンチョル(ソン・ドンイル)は、北にいる孫のリ・ムンソン(ノ・サンヒョン)を探し出し再会させようとしていた。しかし、見つけたムンソンは、素行不良のワルになっていた。サンチョルは、グムスンを悲しませたくない思いから、偽の孫を仕立てることに。小劇団で北朝鮮兵の役を演じていた役者のユ・ジェホン(カン・ハヌル)に大金を支払い、グムスンの孫ムンソンを演じることを依頼するのだった。

 第3話、第4話は、ジェホンがグムスンの孫“ムンソン”として、一族のもとにやって来たところから物語は始まる。韓国の青年であるジェホンが、北朝鮮訛りを話し、身なりも粗末であか抜けない北朝鮮出身者を演じている。カン・ハヌルがジェホンとして、ムンソンを演じるという“ドラマの中で演技している姿を見守る”、いわゆる“詐欺もの”だ。

 “詐欺もの”は、「バレてしまいそうでバレない」ヒヤヒヤ感を観る側に与えて感情を揺さぶるところが面白味であり重要なところだ。ジェホンがムンソンとして北朝鮮出身者を演じる姿を、スクリーンのこちら側にいる私たちは、ムンソンの共犯者のような目線で観ている。

 天真爛漫さが見え隠れするジェホンが、カフェで「アイスアメリカーノ!」とオーダーしたり、チキンを流行りの食べ方で食べたり、DNA鑑定を受けるように告げられたりと身の上がバレそうな危機が何度も訪れる。その都度、ハラハラドキドキして観ていて緊張してしまう。その点ですでにこの作品は成功しているのではないだろうか。とにかく物語が始まった時から、「いつバレるのだろうか……」とそのことが気になって仕方がないのだ。

 本作のオープニングで、偽の孫であるカン・ハヌル演じるジェホンと、本物の孫であるノ・サンヒョン演じるムンソンがフォーカスされている。第1話でムンソンの子どもの頃を演じた、子役のカン・ジウンがすこぶるかわいく聡明で愛らしい。その姿が脳裏に残り、グムスンの孫に会いたい気持ちに共感してしまう。

「あの私のかわいい大切な孫は、今どうしているのだろうか、死ぬ前に一目会いたい……」

 その思いがサンチョルにも痛いほどわかるからこそ、偽の孫をジェホンに依頼したのだ。カン・ジウンが演じた子どものムンソンが“理想の孫”を具現化したような、素朴さと純粋さを持ち、強烈に愛くるしいムンソンとして登場したからこそ、現在のムンソンが身を置く劣悪な環境に胸が痛んで仕方がない。

 グムスンには北出身のムンソン以外にも韓国に孫がいる。3人の孫はそれぞれ、長男セジュン(チ・スンヒョン)、次男セギュ(チェ・デフン)、末娘でありホテル「楽園」の支配人であるセヨン(ハ・ジウォン)。「楽園」を巡って孫たちは争っており、そこへムンソンがやって来たことで、家族が変化していくところが見どころのひとつだ。ホテルを売却したい長男セジュンと、ホテルを愛する末娘のセヨンとの対立の中で、どっちつかずの態度で放蕩を続ける次男のセギュ。そんなセギュが、グムスンがムンソンとの再会に喜ぶ姿を愛おしく見守る姿に優しさを感じた。長兄にムンソンの話をする人間味のある様子や、ソ・ユニ(チョン・ジソ)の美声に大喜びのグムスンの写真を、こっそりと撮る祖母を想う姿にグッときた視聴者も多いのではないだろうか。

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