仲野太賀は“世界に羽ばたく庶民派”? 「ジャパニーズスタイル」を獲得するまでの歩み
仲野太賀が止まらない。
7月期に放送された『拾われた男』(NHK総合)、『初恋の悪魔』(日本テレビ形)での主演に続き、2022年10月期の『ジャパニーズスタイル』(テレビ朝日系) でも主演を務めている仲野太賀。
元々、2020年放送の『あのコの夢を見たんです。』(テレビ東京系)で民放ドラマの初主演を務めてから、『今日から俺は!!』(2018年/日本テレビ系)をはじめとする話題作への出演も続いていたが、主演作品がここまで続いている俳優自体が数少ない。しかも、言ってしまうとアレだが、なかなか地味な俳優ではあると思う。菅田将暉や竹内涼真、神木隆之介、福士蒼汰、中島裕翔ら、同じ年齢の俳優と比較すると、親近感が湧くのも事実だ。そんな彼になぜ、ドラマの主演が続いているのか。
個人的に、最初に太賀の存在を意識したのは、映画『桐島、部活やめるってよ』(2012年) におけるバレー部の小泉風助役だったが、『愛という名のもとに』(1992年/フジテレビ系)のチョロ役でも人気となった俳優の中野英雄を父に持つ彼の俳優としてのキャリアは早く、2006年、13歳の時に芸能界入りし、ドラマ『新宿の母物語』(2006年/フジテレビ系)で俳優デビューを果たしている。2008年には映画『那須少年記』でオーディションから主演にも抜擢されるなど順風満帆にも思えるようなスタートをきっているが、本人としては、そうでもなかったようだ。インタビューでは、「10代の頃はとにかく悔しくてしょうがなかった」とも発言している。(※1)
とにもかくにも悔しかったと本人が言う10代(2003年~2013年)を抜けて、2014年から太賀は大きく飛躍する。そのきっかけの一つは、2014年に開催された第6回TAMA映画賞にて最優秀新進男優賞を受賞したことだろう。(※2)筆者自身も当時、現地で授賞式を目撃していたが、同時に受賞した菅田将暉や、最優秀新進女優賞の能年玲奈や門脇麦と併せて、強く印象に残っている。賞の選考対象の一つとなった『禁忌』では、家庭環境に大きな問題を抱えた青年を静かに、しかし時に怒りを爆発させるなど、見事に演じきっていた。今の彼につながる、視聴者に共感させて泣かせる演技を当時から、既に身につけていた。
その後、月9『恋仲』(2015年/フジテレビ系)での主人公の友人役、『ゆとりですがなにか』(2016年/日本テレビ系)での、ゆとりモンスター役、日曜劇場『仰げば尊し』(TBS系)でのパンチパーマにヒゲがトレードマークの高校生役と併せて、その知名度を映画界よりも外に広げた。『ゆとりですがなにか』を観ていて当初は嫌いで仕方がなかった山岸が、徐々に愛すべきキャラクターになっていったのは、太賀ならではだろう。脚本を務めた宮藤官九郎も、インタビューで、太賀の好演により山岸のキャラクターを成立できたと述べており、魅力的なキャラクターが評価され、Huluにて主演ドラマ『山岸ですがなにか』(2017年)も作られている。(※3)
並行して、映画界ではもちろん『追憶』(2017年)、『50回目のファーストキス』(2018年)、『来る』(2018年)のような大きな映画にも出演しているが、深田晃司、河瀨直美、佐藤快磨、中川龍太郎、松居大悟、廣原暁、冨永昌敬ら映画祭で受賞するような芸術面で優れた映画を作るような監督の作品に続々と出演しているのも印象的だ。2017年には、深田監督作『淵に立つ』で第38回ヨコハマ映画祭にて最優秀新人賞も受賞した。